FLAは、アップルCEOのティム・クックが今年1月、一部メディアなどの報道を受けてフォックスコンの現場監査を依頼した団体。このミーティングが行われた時期は「今年3月」とあるから、訪中したクックがフォックスコンの組み立てラインに自ら足を運んだのよりも少し前のこと、となろう。
フォックスコンを視察するアップルのティム・クックCEO
実はこのミーティングにアップルからも一人だけ幹部が参加しており、それがシニアバイスプレジデントのジェフ・ウィリアムズ、ティム・クックのCEO就任に伴い、オペレーションの責任者に昇格した人物だ。
ウィリアムズに対してもFLA代表者はいろいろと注文を付けた。供給業者の施設まで含めて800を越える拠点を対象にするなど、電子機器業界ではもっとも広汎な監査プログラムを作り上げてきたことに自信を持っていたウィリアムズ、そしてアップルの経営陣らは、FLAの注文に意表を突かれた、とある。
NYTではウィリアムズ当人に取材できていないが、FLA代表者のコメントは取ってあるので、おそらく間違いのないことだろう。いずれにしてもアップルがすでに声明などを通じて公にしているように、この問題を最重要課題の一つとして事にあたっていることが、この「ミーティング同席」からも伺える。
このミーティングでの話をウィリアムズが本社に持ち帰ると、アップルではさっそく関連業務の体制を強化。社内での評価が高かった元幹部二人を専任として再び雇い入れたほか、「社会的責任」関連の部門の人員を約3倍に増員して計画執行に取り組ませることにしたという。
こうした取り組みの成果について、NYTでは量的な進捗——数字に表れた変化についてまとめた図表を掲載している。
関連記事によると、FLAから指摘があった360件の問題(改善が必要とされた点)のうち、8月時点で284件について対策が講じられたという(図表は6月末時点の状況となっている)。
競争力に直結する従業員の確保
アップルとフォックスコンがこうした対策を本気で打ってきた背景には、世評(NYTあたりはその最先鋒といえるかもしれない)という対外的な事柄のほかに、見方によってはもっと重要ともいえそうな当事者側の事情があるようだ。
その事情とは「労働力の確保」という問題だ。