フォックスコン成都工場で働く女性従業員(前掲のビデオで後半に登場)によると、彼女が一年半ほど前に勤め始めたときには、背もたれもないプラスチック製のスツールにすわってiPadの品質を検査していた。このお粗末な椅子のせいで生じた背中の痛みのせいで、夜もろくに眠ることができなかった。ところが、今年夏のある日、高い背もたれのついた木製の椅子が支給された。それで彼女は「噂が本当だった」ことを知った……という話である。さらに、一部ではすでに座面にクッションの入った椅子が支給されている、という噂も耳にしているという同従業員の話も出てくる。
この変化をもたらしたきっかけが、前に触れた3月のミーティング——という話の展開だが、ほかにもこの女性従業員がフォックスコン側で提供し始めた教育プログラム(?)で編み物とスケッチを習っていること、こうした変化を受けて「より良い暮らしが手の届くところにある」と彼女が確信するようになったことなども記されている。
ナイキ、パタゴニア…アップル? 業界リーダーにかかる大きな期待
「中国問題」の解決に向けて本格的な取り組みに乗り出したアップルだが、依然として秘密主義的な部分が残る同社の姿勢に対しては「もっと情報を開示・共有しないと、抜本的な状況改善にはつながらない」とする外部の声も上がっているという。NYTでは、こうした製造現場の労働条件や環境などについて各業界をリードするナイキ、ギャップ、パタゴニアの例を持ち出して、「業界トップが変わっていることを示さないと社会的な影響は限られる」旨の指摘をしている。
ただし、ティム・クックはDカンファレンスに登場した際だったか、こうした事柄についての良い点は「どんどん他社にも真似てほしい(製品のデザインなどとは違って)」との考えも示していた。そのことなども考え合わせると、今後比較的早い時期にこの開示と共有については手を打ってくるかもしれないと考えられる。
「全自動化には予想以上に時間がかかりそう」とWSJ
NYTの記事では直接触れられていないが、フォックスコンはすでに大々的に組み立てラインの自動化を進めるとの考えを明らかにしている。12月はじめにWall Street Journal(WSJ)が掲載した記事では、この計画の進捗状況が伝えられていた。
テリー・ゴウが2011年にぶちあげたオートメーションの導入——「robothic arm」を2012年に30万台、2014年までには100万台導入するという計画は、ふたを開けてみるとなかなか実現が困難で、今年6月には「今後5〜10年以内に全自動化した工場を実現」という目標にトーンダウンしたという。