法人税改革どころではない米国
さて、大西洋の反対側のワシントンはどう動いているかというと、全体として「それどころではありません」という有り様のようだ。
例の支出強制削減の発動回避をめぐる話し合いで、「もっと増税を」というオバマ政権・民主党側と、「支出削減の枠組みを先に決めるのが筋」とする共和党側との歩み寄りがほとんど見られなかった(その後、3月1日にオバマ大統領は今後10年間で政府の支出を強制的に1兆2000億ドル削減する大統領令に署名、強制削減が発効された)。
この件、期限切れまであと10日を切った2月19日にオバマ大統領が、後ろに制服を着た軍人や警官などをずらっと並べて「このままだと政府の資金で運営されている公的サービスはみんな止まってしまう。また何十万という公務員が仕事を失うぞ」と共和党にかなりあからさまに圧力をかけた。
オバマ大統領の顔には、前週末にタイガー・ウッズと組んでラウンドした際のゴルフ焼けがまだ残っている。そのせいか「来週の金曜日には大事な公的サービスがすべて止まる」と言われても、いまひとつ切迫感にかける印象も受けてしまう。
オバマ側が圧力をかけると、翌日には共和党の重鎮で下院議長を勤めるジョン・ベイナーが「そもそもこんな事態を招いた責任はオバマ側にある。自分で種を蒔いておいて、今さらそれを怒っているとはどういうことだ」とする趣旨の意見記事をWall Street Journalに寄稿した。
お互いに「ここが正念場」で、はたしてどんな落としどころを見つけ出すのやら……という感じであった。
ちょっと余談だがオハイオ州選出の重鎮、ジョン・ベイナーは一般教書演説のときにもオバマ大統領の後方に副大統領のジョー・バイデンと並んで座っていた。
オバマ大統領、ジョン・ベイナー(右)、ジョー・バイデン副大統領(左)
俳優のトミー・リー・ジョーンズに杉良太郎をちょっと掛け合わせたような、なかなか強面の御仁に見えるが、なぜだか涙もろいことでよく知られている。Huffington Postの記事には「During his swearing-in, Boehner -- who is well known for wearing his emotions on his sleeve -- made clear that it was a sentimental moment.」とあるし、YouTubeで「Boehner emotional」と検索すれば、ジミー・ファロンのパロディも含め、たくさんの動画が見つかる。
さて、話を戻そう。