以前、本コラムでMOOC(Massive Open Online Course)を取り上げたことがあったが、高等教育の世界を大きく革新しそうなこの流れがさらに勢いを増しているようだ。
2月下旬には日本でも「東大がCourseraと組んで今年秋から2つの講座を始める」という発表があったばかり。
一足先に盛り上がりを見せている米国では、ついにあのマイケル・サンデル教授——著書『これからの「正義」の話をしよう』や、テレビ番組『ハーバード白熱教室』で知られるハーバード大ロースクール教授——の講義が、3月12日からオンラインで公開されるそうだ。
著名コラムニストのトーマス・フリードマン(2007年11月撮影)
サンデルの幼なじみである著名コラムニスト、トーマス・フリードマンがNew York Timesへの寄稿「The Professors' Big Stage」の冒頭で明かしてもいる。
サンデルが利用するプラットフォームは、MITとハーバードが共同で運営する「edX」。edXで人文系の講座が提供されるのは、サンデルの授業が初めてだという(註1)。
そのサンデル本人から「白熱教室」のテレビ番組がアジアで大変な評判となり、「韓国に呼ばれた際にはプロ野球の試合で始球式をやった」「ソウルでやった講義には会場となった屋外授業に1万4000人もの人がつめかけた」などと聞いて、「オレが前から言ってた通りだろう。教育界に革命をもたらすMOOCの流れは決してハイプ(まがい物)なんかじゃない」と書くフリードマンの文章からは、ちょっと昂ぶった感じさえ伝わってくる(註2)。
ところで、当のフリードマンはどうも韓国と中国の区別がついていないようで、「1万4000人が集まった」というその講義が本当にソウルで開かれたのか、それとも中国のどこかで行われたのかという点は怪しいが、そこはあまり重要ではないと思うのでここでは詮索しない。著名ジャーナリストであるから、さすがに国の区別はついているであろうが……米国人に「イリノイとインディアナを混同した!」と文句を言われても困惑するのと同じことだから、その点はさて置こう。
一方、韓国でも大した盛り上がり振りだったことは本当のようで、Googleで探してみると「マイケル・サンデル・フィーバー」と題するコラムがKorea Timesのサイトで見つかった。
昨年6月に掲載されたこのコラムによると、サンデルがプロ野球の試合で始球式をやったことと並んで、延世大学での講義では「もともと無料のチケットが3万5000ウォンで取引された」「サンデルの著書が2冊もベストセラーになった」「ソウルの書店であったサイン会には、ソウル市長も顔を見せた」などと書かれている(註3)。
中国でのサンデル人気について、フリードマンはChina Dailyの「ハリウッドスターやNBA選手並み」という記述を引用しているが、こちらについてはそれらしい情報がウェブで見つからなかった。