日本IBMは4月4日、データベース管理ソフトウェア(RDBMS)の新版「IBM DB2 V10.5」を発表した。トランザクションやバッチなどの一般業務処理と、集計や分析処理の両方を実行できる“ハイブリッド型”だ。新たな技術で高速データ処理やデータ圧縮を実現しており、中堅中小企業からの需要を見込んでいる。同社と同社のビジネスパートナーから販売し、6月14日から提供を開始する。
DB2 V10.5は、表形式で管理されたデータを行単位で扱う業務処理向けのRDBMSの機能と、データを列単位で扱い、メモリ上に展開して高速に分析処理を行うカラム型インメモリデータベースの2種類の機能を1つの製品で実現している。従来は一般に、業務処理向けと分析向けの2つのデータベースを別々に構築する必要があったが、今回の製品は、単独で運用できるため、初期投資と運用管理コストの削減が可能になるとしている。
新版は、トランザクション処理を実現する従来からのRDBMSの機能とともに、新たに「BLUアクセラレーション」と呼ばれる高速データ分析処理機能を搭載している。この機能は、データをストレージ装置から列単位で取り出し、高い圧縮率でデータの順序を保持したまま圧縮して、メモリ上に展開。マルチコアとSIMD(Single Instruction Multiple Data)で並列分散処理機能を用い、高速分析処理を実現したという。
IBMの実験では、BLUアクセラレーションの機能を活用することで、従来のRDBMSに比べ、レポートや分析が8~25倍程度高速になり、データ圧縮では90%以上の圧縮率を記録したという。
同日に開催された会見のデモでは、売上明細のデータベースから、分析ソフトウェア「SPSS」を使い、店舗別商品売り上げ分析のレポートを作成するという想定で、明細は1000万件、商品は1万件、店舗は100件のデータを処理した。従来型の表を使った場合は出力時間は59秒だったが、カラムストア型の表を用いた今回の製品では2秒で完了した。
同社では、BLUアクセラレーションはDB2にシームレスに組みこむことができ、設計やチューニングを簡略化、データをロードすれば、すぐに分析処理をすることが可能――などの利点があるとしている。BLUアクセラレーションはIBMの世界の基礎研究所、開発研究所で開発された技術で実現したという。

塚本眞一氏

Vivek Mahajan氏
同社理事でソフトウェア事業 インフォメーション・マネージメント事業部長の塚本眞一氏は「一般業務処理と分析処理のハイブリッドは、これまではできなかったが、強く求められていた技術だ。その背景にはビッグデータを活用したいとの志向がある。中堅中小企業を念頭に、多くあるアドホックなクエリに対するニーズに応えたい」と話す。
専務執行役員でソフトウェア事業を担当するVivek Mahajan氏は「DB2 V10.5は、2013年で最も大きな発表となる。この製品は、RDBMSに大きなイノベーションをもたらすものだ。(新技術開発の)きっかけになったのはビッグデータだ。膨大なデータからいかに早く知恵を取り出せるかが、企業にとって重要になる」と語った。
同社は、DB2 V10.5の販売先として、オンライントランザクション処理(OLTP)と分析が混在する業務アプリケーションのデータベース基盤を求めている企業、既存のDB2ユーザーで同一の環境下で分析を始めたい企業、分析アプリケーションでスモールスタートを望む企業などを考えており「地方でもパートナーと連携し、積極的に手を打っていく」(Mahajan氏)意向だ。