少し間が空いてしまったが、途中になっていた米国家安全保障局(NSA)で起こった機密漏洩スキャンダル関連の「ニュースの落ち穂拾い」の続きをする。この一件については、各所で報じられている通り、国外亡命を企てる「内部告発者」Edward Snowden容疑者をめぐる「大捕物」のような展開となってしまっている。
一番気になる「米英の諜報機関の活動実態」といった面に焦点を当てた報道が減ってきているようでいささか拍子抜けの感もあるが、一応区切りをつける意味でも、関連のニュースの中から目を引いた話題をさらに紹介する。
ブーズ・アレンのマッチポンプ
まずは今回の騒動で一躍有名になったBooz Allen Hamilton(Booz Allen)について。以前の話のなかで「現在、国家情報長官を務めるJames R. Clapperも同社の出身者」などと記していたが、その後に公開されたWashington Post(WP)記事(註1)やThe New York Times(NYTimes)記事(註2)、それにBusinessweek(BW)の特集記事(註3)などからは、同社を含む一部の民間企業が、米国政府による「サイバー戦争」関連の取り組みの中で不可欠な役割を担うようになっている様子が伝わってくる。
米政府による国防予算の縮小と、それに伴う民間へのアウトソーシング増加という流れは、昨日今日に始まったものというわけではない。George W. Bush政権で副大統領を、また1990年代初めのGeorge H. W. Bush政権では国防長官をそれぞれ務めたDick Cheney(註4)が、野に下っていたClinton政権時代にHalliburtonという国防関連企業のトップを務めていたことは比較的有名な話だ。こうした流れがデジタル分野の諜報戦などにも引き継がれたとも言えそうだが、特にNSA関連では、現在Booz Allenの副会長を務めるMike McConnellなる人物がClinton政権時代(1期目の1992~96年)にNSAの長官として諜報活動のデジタル化を進めた中心人物だった、などという話が前述のNYTimes記事には出ている。
この記事によると、McConnellは天下り先のBooz Allenでサイバー部門の立ち上げに携わったりした後、2007年に今度は国家情報長官に就任。「イランの核開発関連施設に対するサイバー攻撃の計画(“Olympic Games”と呼ばれていたらしい)を監督したのも、このMcConnell」「BushがBarak Obamaへ政権を引き継ぐ際には、McConnellがブリーフィングを任された」などといった記述もある。
現財務長官のJack Lew(註5)が、2010年に連邦予算局(Office of Management and Budget:OMB)長官に指名される前まで、約4年ほどCitigroupに籍を置いていた――「在任中には、バミューダ諸島やケイマン諸島などに登記したCiti子会社の監督をしていた」らしい(註6)――ことや、Henry Paulson(註7)やRobert Rubin(註8)といった歴代の財務長官がGoldman Sachsのトップを務めていたことなど、米財務省と金融業界とがかなり近しい関係にあるというのは以前から見聞きしていた。
国防・諜報の分野でもそれと同じような官民の関係ができているということだろう。ただし、計画立案者(政府内部でそれを考えた張本人)が次には民間側からその計画実行に必要とされる人材・資材を納入するという構図は、素人の目から見てかなりの危うさが感じられる特に「国家安全保障に関わる問題」「国家機密」といった言葉がつきまとう領域であることを考えると、余計にそう感じられもする。