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アルゴリズムとセンサと--グーグルのNest買収をめぐって - (page 3)

三国大洋 2014年01月17日 13時11分

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「Nest Energy Services」に注目


[Roadmap: DESIGN TO SHIP, AND OTHER LESSONS ON DEVE - GigaOM]

 Nestについて現時点でわかっていることをざっと書き出すと次のような感じになる。

  • 社員数はすでに約300人(Fadellのブログにそう書かれている)
  • ベンチャーキャピタルから集めた資金はあわせて8000万ドル(CrunchBase
  • 収入源は2つ2種類のデバイス販売と、それに「Nest Energy Services」を通じて得られる電力会社から収入(Forbes記事にはこのサービスについて「一件あたり年間30~50ドルの収入」という推定が出ている)
  • Learning Thermostat(一個約250ドル)の累計出荷台数は推定100万台超(昨年1月末時点で、月間出荷台数が4万~5万台に達し、夏までには月間8万5000台のレベルまでいけそう、という関係者の話がGigaOMに出ていた)。ざっくり計算して、月間4万台x25ヶ月で100万台だから、多くて100万台+アルファで、200万台到達にはまだまだ時間がかかる、といったところか。
  • 発売から日の浅い煙探知機についてのデータは見つからず

 Nestの製品がいくら高額(競合他社の製品に比べて)といっても、1台250ドル程度のものを1年に数百万台売っていただけでは、32億ドルの価値を正当化できる事業にはなりそうにない。極端な皮算用で、米国の全世帯(ざっくりと1億世帯)にThermostat(250ドル)とProtecter(130ドル)の両方が1つずつ行き渡ったとしても380億ドルに過ぎない(それだけでも大した額、という見方もあろうが)。ましてやサーモスタットや煙探知機では、スマートフォンのように「2~3年ごとに新機種に買い換え」といったことはまずなさそうだから、ハードウェアの販売だけではそれほど大きな事業の伸びしろを望めそうにはない。

 これまでにあったNestの製品・サービス発表の中で「Nest Energy Services」がいちばん面白いと思えた理由も、そうした事業モデルあるいは戦略の部分と関係がある。


[Rush Hour Rewards from the Nest Learning Thermostat]

 この動画で説明されている「Rush Hour Rewards」というのは、「Nest Energy Services」の3つあるプログラム(オプション)の1つで、電力消費量がピークを迎えそうになった時に、Nestのサーモスタットを使ってユーザーの家庭の消費量を自動的に抑え、それで電力会社側が節約できたコストの一部をユーザーとNestが山分けする、というもの。

 ユーザーにとっては、Nestのサーモスタットを導入するだけでもふだんの電気代を2~3割も節約できる上に、このプログラムに一度登録してしまえば毎年お小遣いのようなものまで(電力会社から)もらえることになるらしい。

 一方、電力会社にはピーク時の電力確保にために、ふだんは止めてある火力発電設備(石炭ベースのものも少なくないという)を稼働させたり、他の電力会社から割高な値段で電気を融通してもらったりといった必要があるので、それを避けるためにも少しでも需要の側を減らしたいという事情がある。また、こうしたピーク時の節電促進のために米国の電力会社が費やしている金額はあわせて年間90億ドルにもなるという話が下記のCNET記事に出ている。

 前述のLevyが書いたWIREDの記事の中には、「米国の1世帯あたりの電気代は年間約2200ドルで、だいたいその半分がサーモスタットでコントロールできるもの」といった専門家の説明も出ている。これも想定市場規模の手がかりとして使えるかもしれない。つまり、ざっと1000億ドル(1000ドルx1億世帯)といった数字が見えてくる(Nestとしては、それだけの規模の市場=お金の流れに手を突っ込んで、何%を自分たちのほうに持ってこられるか、といった皮算用の仕方になるはず)。

 仮に、インストールベースが1000万台まで増えたとして、そこから1台につき年間30ドル程度の収入が見込めるとなれば、毎年の売り上げはそれだけでも3億ドルと結構な規模になる。ただし、米国でもすべての電力会社がこうした節電インセンティブのプログラムを実施しているわけではなさそうで、また電気の使い方などは国や地域によって大きく異なるはずだから、マネタイズの部分はどうしてもいろんな「if」がついた皮算用ということになろう。

 なお、Yoky Matsuokaのブログの中には、この「Rush Hour Rewards」の効果について「平均で56%も電気を節約できた」という記述がある。また電力会社から受け取った節電のインセンティブが、「ひと夏で85ドルにもなった」というRush Hour Rewards加入者のツィートも紹介されている。

 いずれにしても、サーモスタットや煙探知機といった地味な分野にiPodばりのクールなハイテク・ガジェットを持ち込み、これらの分野でブランドを確立しつつあるNestには、かつてSteve JobsがiPhoneでしたこと――「携帯電話の世界に小型のコンピュータを持ち込み、通信・IT業界全体の力関係を大きく塗り替えた」ことを想起させるところがある(通信キャリアと端末メーカーとの力関係が、iPhoneの登場で大きく変わったことは改めて説明の必要もあるまい)。

 そういうNestが、良くも悪くもお騒がせな、しかも膨大なリソースをもつGoogleの力を借りて、この先どんなことを仕掛けてくるのか。あるいは、これまで「優れたユーザーエクスペリエンス(の提供)」を重視し、そのために自社でハードウェアからソフトウェア、クラウドまであらゆる部分の設計を手がけてきたNestが、今後そうしたAppleのようなやり方を変えることがあるのか。さらには、Nestのプロトコルで対話するデバイスのエコシステムを構築しようと、他社にAPIを提供する、といったことが起こるのかどうか(註3)。とりあえず「海の向こうの出来事」とはいえ、気になって仕方がないところである。

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