松岡功の一言もの申す

IBMとレノボが取り引きしたx86サーバ市場の背景

松岡功

2014-01-28 10:29

急速に進むx86サーバのコモディティ化

 米IBMと中国Lenovoが1月23日(米国時間)、LenovoがIBMのx86サーバ事業を買収することで合意したと発表した。買収額は23億ドル。IBMが売却するのはx86サーバ「System x」、ブレードサーバ「BladeCenter」「Flex System」などで、同事業に携わってきたIBM従業員のうち7500人ほどがLenovoに移籍する。

 両社の合意は、利益率の低い事業から撤退してソフトウェアやサービスなど高付加価値事業へのシフトを進めたいIBMと、買収したx86サーバをテコに企業向け事業の拡大を図りたいLenovoのお互いの思惑が一致した格好だ。

 IBMのx86サーバ事業をめぐっては、LenovoのほかにDellや富士通なども売却先候補に挙がっていた。IBMは昨年も同事業をLenovoに売却しようとしたが、取引価格が折り合わず、合意に至らなかった経緯がある。今回の買収額は、昨年の交渉で取り沙汰されていた取引価格よりも下回っていることから、IBMが譲歩したとも見て取れる。

 今回の動きであらためてクローズアップされるのは、x86サーバのコモディティ(汎用品)化が急速に進んでいることだ。コストパフォーマンスが飛躍的に向上しているといえば聞こえはいいが、価格がどんどん低下して安値のたたき合いになっているのが実態だ。

x86サーバ市場に起こりつつある構造変化

 この現象は、まさしくPCがたどってきた傾向と同じである。では、PC市場のサバイバル競争はどのように繰り広げられてきたのか。それはひとえにグローバルでのビジネスボリュームの大きさ、つまりシェア争いにほかならない。シェア争いで上位に食い込めないと継続的な収益確保は難しいという戦いを、PCベンダーは強いられてきている。

 x86サーバ市場にもこうしたPC市場と同様のサバイバル競争が、これから巻き起こるのは必至だ。米調査会社のIDCが公表している同市場の出荷台数シェア(2013年7~9月期)によると、HPが29.7%、Dellが21.4%で、両社だけで50%以上を占めている。今回、取り引きを行ったIBMとLenovoはそれぞれ8.5%、2.6%。両社を合わせても10%強で上位2社とはまだ差があるが、Lenovoは今後このシェアを足がかりに上位へ食い込んでいく構えだ。

 ただ、最近のx86サーバ市場では、そうしたベンダー間のシェア争いとは別に新たな動きも出てきている。受託製造会社によるユーザーへの直接出荷という動きだ。これはつまり、GoogleやAmazon.comといった大手クラウドサービス事業者が、データセンターの効率運営を図るためにx86サーバを自ら設計し、受託製造会社に数万台単位で発注しているものだ。この動きは年々加速しており、先ほどのIDCの調査でも14.6%のシェアを占めるところまできている。

 ベンダーにとってこの動きは自らの存在意義を問われかねないものともいえる。新たな競合相手も交えて、ますますタフな戦いを強いられることになりそうだ。そうした中で行われた今回のIBMとLenovoの取り引きは、x86サーバ市場に新たな構造変化が起こりつつあることを示唆しているのかもしれない。

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