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仕事と趣味は遠ければ遠いほどいい--異なるものを結び付けることの重要性

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2014-02-18 08:00

 ビジネスマネジメントにおける一つの課題は、仕事と個人の関心を完全に一致させることが不可能であることだ。仕事と個人の関心が近ければ仕事を通じた自己実現はよりやり易く、遠ければそのバランスを取るのに苦労することとなる。

 例えば筆者の場合、「金融」×「IT」×「アート」×「釣り」は、ほぼ不可能に近い。「釣り」と「アート」を結びつけるために、釣りにつかうオモリに絵の具で色を塗ってみたり、「金融」と「アート」を結びつけるために、会社で出版する本の表紙に自分の描いた絵を使ってみたりと、多少無駄な抵抗を試みているが、どうしても4つが一緒になることはない。

 しかし、どうやら「釣り」と「IT」、そして「アート」と「IT」は結びつくようだ。

 まず「釣り」と「IT」から。

 カナダ製のポータブル魚群探知機は、なんとスマホとBluetoothで通信して水底の地形や魚の位置を携帯端末で状況を確認できる。しかも、釣り具なのにUSBで充電できるって、釣りが趣味であることがちょい誇らしくなる、今までにない感覚である。スマホなだけに、当然釣果を記録するだけでなく、ユーザー同士のコミュニティに参加して、釣果を自慢することもできる。

 よくよく考えると、釣りとは魚の探査、浮きや糸を通じた魚の状況のモニタリングによって成り立っているスポーツである。つまり、釣りはセンサテクノロジの集積である(現在、その多くは人力だが)。それを変えようというのが、このポータブル魚群探知機だ。しかし、センサテクノロジと言えば、やっぱりイスラエル。今後はイスラエル製のフィッシングテクノロジが釣りの世界を変えることを期待したい。

 一方、「アート」の世界では、イギリスのテート美術館がアート体験をテクノロジで面白くするアイデアを募集し、優勝者には1万ポンド(約170万円)の賞金と6万ポンド(約1020万円)の開発費用が授与された。初代の優勝者は「The Workers」というチームの「After Dark」というプロジェクトだ。

 これは深夜の美術館にカメラとライトを取り付けたロボットを置き、それを鑑賞者がネット経由で自在にコントロールできるようにするものだ。その様子をコメントとともにネットで中継し、世界中の鑑賞者と共有できる。誰も居ない夜の美術館でロボットの照明だけで鑑賞するという、何ともぞくぞくするアート体験だ。

 従来、組織論やモチベーション論では、ビジネスの方向性と個人の関心が異なることを課題としてとらえていたが、これからは、その異なるものをいかに結びつけるかが重要なテーマとなるだろう。そのとき、これまでは課題であった“異なること”がむしろ重要になる。

 先ほど挙げた「釣り」と「アート」の例は、親和性がなさそうなものを結びつけることで、今までにない顧客体験が作り出される例である。

 コスト競争で劣後する先進諸国のワーカーは、仕事を仕事としてのみとらえる発想から、仕事と個人の関心事をいかに結び付けてユニークな発想をビジネスにもたらすかが付加価値となる。そのためには、仕事と個人の関心事が同じであるよりも、異なることが大切だ。

 ちなみに「金融」と「IT」に関しては、恒例となった金融のベンチャーイベントである「金融イノベーションビジネスカンファレンス」を3月3日に開催するので、興味のある方は是非参加してほしい。いかにして金融らしからぬものを金融へ持ち込めるかの祭典である。

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飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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