松岡功の一言もの申す

Windows XPサポート終了におけるIT業界の責任

松岡功

2014-02-19 08:00

 日本マイクロソフトによる「Windows XP」のサポートが4月9日で終了する。同社をはじめIT業界を挙げて新しいOSへの移行を促しているが、ベンダー側の責任も踏まえておくべきだ。

改めてセキュリティ対策の重要性を訴求

 日本マイクロソフトが先ごろ、4月9日にサポート期間を終了するWindows XPについて、セキュリティの観点からサポート終了後の脅威と最新の利用環境への移行の必要性を説明する記者会見を開いた。会見には、経済産業省や一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター、セキュリティベンダー主要各社も出席し、新しいOSへの移行を訴えた。

 Windows XPは4月9日をもってサポートが終了し、それ以降はセキュリティ更新プログラムが提供されなくなる。また、その後は新たに脆弱性が発見されたとしてもその情報が公開されないため、同OSを使い続けているとセキュリティのリスクが高まることになる。

 日本マイクロソフトはWindows XPサポート終了後のリスクについて、これまでもたびたび説明の場を設けて新しいOSへの移行を呼びかけてきた。同社最高技術責任者(CTO)の加治佐俊一氏はそうした経緯を踏まえ、今回の会見について「毎年2月は政府の定める情報セキュリティ月間であり、Windows XPのサポート終了まで残り2カ月を切ったことから、改めてセキュリティ対策の重要性を訴えたい」と強調した。

 会見内容の詳細については関連記事を参照いただくとして、ここでは筆者が会見で抱いた違和感について記しておきたい。

聞こえてくる中小・零細企業の恨み節

 今回の会見では、セキュリティベンダー主要各社の代表も登壇してWindows XPのセキュリティリスクと新しいOSへの移行を訴えていたが、中には「サポート終了の話は何年も前から告知されてきたことなので、4月になって間に合わないというのは怠慢だ」とのコメントもあった。

 「怠慢」との表現はいかがなものか。確かに、以前から告知されてきたにもかかわらず、無関心なままのユーザーもいるかもしれないが、企業の中にはWindows XP上で利用している特殊なアプリケーションソフトが移行できなくて困っているケースも少なくない。

 それにも増して数多く見受けられるのは、リーマンショック以降、非常に厳しい経営環境にさらされてきた中小・零細企業にとって、新しいOSを搭載したPCに入れ替える余裕がないという状況だ。そうした企業は、Windows XPを使い続けることのリスクも十分理解しているが、アベノミクスの好影響もなく、いかんせん資金がないのである。

 そんな企業からは、「もともと誰が提供したものなのか。今回の移行に伴ってIT業界が潤う一方で、われわれが苦しい状況に追いやられるのはどうも納得がいかない」との恨み節さえ聞こえてくる。

 また、会見後、出席者が一堂に揃って写真撮影に応えていたシーンがあったが、その際、出席者の中から「拳をあげてオーとやりますか」との声も聞かれた。結局、そこまではなかったが、何とも違和感を抱かずにはいられなかった。苦しい状況に立たされているユーザーがいることを頭の片隅にでも置いていれば、出てこない言葉ではないか。

 日本マイクロソフトは、4月までに国内で使用されているPCの1割までWindows XPの構成比を引き下げたい構えだ。逆に言うと、少なくとも1割は残る。その1割のユーザーに対するケアは、IT業界の責任でもある。

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