三国大洋のスクラップブック

壁に耳あり、天井に目あり?--ネットワーク接続するLED照明の光と影 - (page 2)

三国大洋 2014年02月21日 12時24分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 ところで。こうしたサービスの提供を受けるユーザーは、対応するスマートフォンアプリを立ちあげる(あるいは、バックグラウンドで開いておく)という行為を通じて、自分の居場所を知らせる(=位置情報データを開示する)ことに同意していることになるが、なかにはそうした同意がなくても個人のプライバシーに関わるようなデータを収集できてしまうものも出てきているという。

 The New York Times(NYTimes)によると、ニューヨーク市に隣接するニューアーク(ニュージャージー州)の空港に171基のLED照明が最近になって設置されたが、この新型照明装置に監視活動にも利用できるカメラやチップなどが埋め込まれていることから、人権擁護団体関係者などの間からはプライバシーに関する懸念の声も挙がっているという。

At Newark Airport, the Lights Are On, and They’re Watching You - NYTimes
(記事に挿入された照明の拡大写真をみると中央部にカメラが内蔵されているのがわかる)

 Sensity Systemsという米企業が開発・納入したこのLED照明には、カメラや各種のセンサーと接続できるチップ類が内蔵され、無線通信網経由でデータなどをやりとりすることも可能。「人感センサー付きで自動点灯・消灯するLEDライト」というのをよく見かけるが、あれを技術的に洗練させたものが数十~数百個ネットワークで接続されている、といった姿を想像するといいかもしれない。Sensity SystemsのCEOも、「まったく新しいネットワークを構築するのに最適なインフラとして屋外照明をとらえている」「(顧客は)人や地球についての情報を収集することにこの新しいネットワークを使ってみたいと考えている感じがする」などとコメントしている。

 この新型LED照明システムを導入して得られる具体的なメリットについては、節電効果や維持費低減のほかに、監視カメラによるセキュリティなどが挙げられている(例えば映像解析ソフトをつかって自動車のナンバーを割り出すなど、具体的な用途の例も記されている)。

 一方、こうした新しい仕組みを使って収集できる膨大なデータを「誰が、どう利用するか、管理していくか」といった点については、まだあまり検討が進んでいないらしい。ニューアークの空港の場合は、同空港を管理する港湾局(Port Authority of New York and New Jersey)がデータを所有・利用し、警察などの捜査当局に対しては正式な捜査令状(の提示)もしくは書面での要請があった場合にだけデータを開示する、という指針が設けられている。またSensity Systems側の、「無線通信でやり取りされるデータは暗号化されており、非常に安全」とする説明もある。ただし、2013年から続いているNSA(米国家安全保障局)をめぐる騒動などもあわせて考えると、こうした指針や手続き、セキュリティ対策だけでデータの安全性を十分に確保できるのかといった不安も残る(少なくとも、そうした不安を払拭するだけの具体的な説明は必要と思われる)。

 なお、NYTimesでは、こうした新種の照明装置の潜在市場規模について「今後10年間で1000億ドル以上」とする米コンサルティング会社Navigant Consultingの試算を紹介(おそらく米国の自治体などによる支出と思われるが、詳しい説明はない)。またCisco SystemsやPhilipsといった大手各社もこの分野で動きを進めているとの記述もある。

 先月GoogleがNestの買収を発表した際にも、収集されるデータの扱い(とプライバシーに関する懸念)がまっさきに大きな注目を集めていた。サーモスタットやスマートフォンなら、ユーザー(消費者)に比較的大きな選択の余地がある。極端な場合、スイッチを切るという選択肢もあるかもしれない。それに比べて、公共の場に設置されるセンサーや他のデータ収集用機器の場合は、あまりなさそうにも思えるが……。いわゆる「Internet of Things(IoT)」といった流れのなかでこうした話題が今後さらに増えることになるのかもしれない。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

連載

CIO
月刊 Windows 10移行の心・技・体
ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
セキュリティインシデント対応の現場
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]