富士通と日立製作所がこのほど、相次いで新たなクラウドビジネスに乗り出した。共通しているのは、多様なユーザーニーズに応じたクラウドサービスを提供しようという姿勢だ。総合ベンダーらしい取り組みともいえそうだ。
富士通がクラウドサービスの直販サイトを開設
富士通が富士通マーケティングとともに発表したのは、クラウドサービスをウェブから直接購入、利用できる総合マーケットプレイスの開設だ。富士通が運営する大手・準大手企業向けの「富士通WEB MART forクラウド」と、富士通マーケティングが運営する中堅・中小企業向けの「アズマルシェ」を開設することで、より多くの市場に対して総合的にサービスを提供するという。
これにより、ユーザー企業は自らの規模や業種、業務に最適なクラウドサービスを素早く選定し、必要なときにウェブから簡単に購入できるため、システムを早期利用が可能となるとしている。
両社が運営するマーケットプレイスでは、ITリソースから業務サービスまでの豊富なバリエーションを用意。富士通グループのみならず、パートナー企業のクラウドサービスも取り扱うという。とりわけ、アズマルシェでは中小企業への浸透を図るため、当初より59種類のサービスメニューを用意し、今後1年間で100種類まで増やしていく計画だ。
この新たな取り組みで筆者が興味深く感じたのは、一歩踏み込んだ形のユーザー支援を施していることだ。具体的には、アプリケーションの選定で悩んでいるユーザーに対し、最適なアプリケーションを見つけやすくする「富士通アプリストア」と呼ぶナビ機能を新たにモールに組み込み、富士通のアプリケーションラインナップの中から、業種や業務、各企業が抱える課題などの切り口で簡単に検索を行えるようにしている。さらに、専任のコンシェルジュやスペシャリストも配置し、相談できる体制を整えたという。
日立が外部クラウドサービスの技術検証施設を新設
一方、日立製作所が発表したのは、外部のクラウドサービスを業務で本格的に活用するための技術検証を行う「先端クラウドラボ」の新設だ。対象となる外部のクラウドサービスは、Microsoft Office 365やSalesforce.com、サイボウズのアプリケーションサービス、ITリソースを提供するAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Windows Azureなどだ。
日立がこうした取り組みに乗り出したのは、クラウドサービスの本格的な業務活用に向け、クラウドサービスと企業の社内システムをシームレスに接続するニーズが高まってきているものの、全社での導入にあたっては既存環境の改修やセキュリティの確保が課題となっているからだ。
そこで同社がアドバンテージとしているのは、日立グループ内でこれら外部のクラウドサービスを利用しながら、強固なガバナンスに基づいたシステム構築と運用ノウハウを蓄積してきたことだ。先端クラウドラボでは、そうしたノウハウを活用してさまざまな検証をし、ユーザー企業が抱えるクラウド利用に関する課題を解決するとしている。さらに先端クラウドラボの取り組み成果を、2014年度から順次、製品・サービス化してワンストップで提供していく計画だ。
こうしてみると、富士通と日立が発表した今回の新たなクラウドビジネスは、内容こそ異なるものの、多様なユーザーニーズに応じたクラウドサービスをパートナー企業とも連携しながら提供していこうという姿勢において共通している。いずれも総合ベンダーらしい取り組みとも言えそうだ。
富士通がユーザー支援の取り組みとして、専任のコンシェルジュを置くことを挙げているが、今後、クラウドサービスを一層普及させていくためにも、IT業界にもっと「クラウドコンシェルジュ」が出てくるべきだと筆者は考える。富士通と日立の今回の新たな取り組みは、その先鞭をつけた動きにも見える。その意味でも両社の今後のさらなる取り組みに注目しておきたい。
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