三国大洋のスクラップブック

スプリントとT-モバイルを合併させるにはLAクリッパーズを買収すべし(後編)

三国大洋

2014-05-06 08:00

 「本物の高速ブロードバンド提供」という大義で世論を味方に付け、SprintとT-Mobile USA(T-Mobile)の合併実現に向けたモメンタムを生み出そうとしているかのようにみえるソフトバンクの孫正義。その孫に“米国のお茶の間での存在感の不足”といった問題があるのではないか…。前編ではそんな可能性を指摘した。後編では、この問題の手当ての仕方について勝手な考えを記す。


[NBA Commissioner Adam Silver Bans Clippers Owner Donald Sterling For Life]

 

 この認知度向上という点について、ひとつ役立ちそうなのが、現在“大騒ぎの真っ最中”といった状況にある、米プロバスケ(NBA)チームLos Angeles Clippers(LAC)の争奪戦に名乗りを上げることだ。

 LACのオーナーが人種差別発言をし、それをきっかけにNBAから厄介払いされそうになっている――Donald Sterlingというオーナーに対し、NBA事務局が「永久追放(Lifetime Ban)」処分などを発表したが、米国の媒体はこの話題で持ちきりといった感がある。

 この話についての詳細はここでは省くが、「LACが売りに出たら、買いたい」と手を挙げそうな連中の話がESPNだけでなくWSJやBloombergにもすでにたくさん出ている。

 候補者として浮上している中でも一番面白そうなのは、David Geffen(DreamWorks SKGの“G”)とLarry Ellison(Oracle最高経営責任者=CEO)が人気テレビ司会者でメディア企業経営者のOprah Winfrey――Forbesの「世界で最も影響力のある有名人」リストで長年1位――を巻き込んで、LAC買収に名乗りを上げようかどうかと相談中、というもの(近年では複数の投資家がグループを作って買収するケースが多い)。

 そのほか、プロボクシングチャンピオンのFloyd Mayweather Jr.、ラッパーから事業家に転じたSean Combs(P. Diddy)、それにMagic Johnson(Los Angeles Lakers:LALの元大スター、事業家としても成功)などと組んで2012年にメジャーリーグ(MLB)のLA Dodgersを手に入れたGuggenheim Partnersなどの名前も取り沙汰されている(なお、Chris HansenとSteve Ballmerは、NBAチームのシアトル“再”誘致が狙いだから、今回は出てこないだろう、といった観測も見かける)。

 ちなみに、米国人以外のオーナーというのは、すでに前例がある(Brookyn Netsのロシア人オーナーであるMikhail Prokhorov。現在の個人資産額は推定万ドルで123億ドルで、Bloombergの富豪リストを見ると同152億ドルの孫よりも少ない)。

 またロサンゼルスがニューヨークと並ぶ有望市場であることを示す証拠としては、LALがTime Warner Cable(TWC)と共同で作ったTime Warner Cable SportsNetの前例がある(この契約で、TWCはLALに20年間に総額30億ドルを支払うことになっている)。

 この4月にMilwaukee Bucksの売却話がまとまり、最も企業価値が低いとされる同チームに対して5億5000万ドルの買値がついていたから、そこからするとLACには10億ドル以上の値がつく、などといった観測も流れているが、このLAL-TWCの放映権契約をみれば、たとえLAC獲得に10億ドル以上出したとしても十分回収できそうだ。ComcastもComcast Sportsnetというケーブル局(コンテンツホルダー)を持ち、ローカルスポーツ放送市場でしっかり足場を築いていたりもする。

“白馬の騎士”として認知されるチャンス

 このComcastのやりくちについては、「ネットワーク中立性(Net-Neutrality)」という言葉=コンセプトの生みの親であるTim Wuが2014年初めに面白いことを書いていた(ComcastによるTWC買収計画発表の直後に、New Yorkerに寄稿した記事)。

 曰く「Comcastはお膝元のフィラデルフィアで、まずプロスポーツ中継の放映権をしっかり押さえた……MLBのPhillies、NHLのFlyers、NBAの76ersという地元チームと独占放映権を結び、それで有料テレビ分野で競合する衛星テレビの連中を市場から締め出し、高い料金を維持することに成功した」らしい。

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