この有料テレビの部分が近年では頭打ちになり、仕入れコスト(ケーブルテレビ=CATV局への支払い)も高騰して、魅力の乏しい事業となつつある中、それに呼応する形でブロードバンド事業(原価が)への比重が高まっている。それでも、CATVとブロードバンド、電話がバンドルで提供されているから、このスポーツ中継というフックの有効性が失われたとは考えにくい。
ブロードバンド市場のあり方に批判的な学者などからは、「Comcastのブロードバンド事業の粗利率が約95%」といった指摘も出ている(CATVの粗利率は約55%という投資銀行UBSの試算もある)。批判派の見方という点で割り引いても、独占に近い状態のブロードバンド事業がかなり儲けの多い商売であることは間違いなさそうだ。
このComcastによる垂直統合のような動きが進む中では、単に“ブロードバンドの価格破壊”というだけでは相当の苦戦を強いられよう。そう考えたときに、コンテンツとなりそうなNBAチームを押さえておくというのはいい手段にも思える。
プロスポーツチームの争奪戦ともなれば、たとえ獲得に成功できなくても膨大なパブリシティ(宣伝)効果が期待できる。LA Dodgersの買収で脚光を浴びたGuggenheim Groupのように自らは表に出る必要もなく、誰か正統性のあるパートナーを見つけてくればいい。さらに“Larry EllisonやOprah Winfreyと競り合う”となれば、それこそ職場でも家庭でも四六時中名前が出ることになろう。
このLA Clippersの件は、人種差別を巡る問題も絡んで、今大きな社会問題となっている(大統領のObamaも外遊中の記者会見でわざわざ言及したほど)。NBAのコミッショナー、Adam Silverの迅速な対応と英断には、各方面から賞賛が送られている。そして今のところヒール役になっているのが現オーナーだから、その手から優勝候補の一角に食い込むほど強くなったチームを救い出す次のオーナー(グループ)は、このままいくと“白馬の騎士”ということになろう。
かなりのケチとしても知られる人種差別主義者からNBAの競合チームを救い出した“白馬の騎士”が、次なる標的として“寡占状態の市場を牛耳る大手通信各社”に立ち向かうというのは、なかなか悪くないシナリオと思えるのだが。(敬称略)
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【参照情報】
- David Geffen Interested in Buying Clippers--WSJ
- Billionaire Bevy Awaits Clippers With Forced Sale by League--Bloomberg
- Is Oprah the Next Owner of the LA Clippers?--Bloomberg
- Would Billy Crystal Save the Clippers?--Bloomberg
- LA Clippers' Controversy: Will Magic Johnson Buy?--Bloomberg
- How Much Will Clippers Go for if Sterling Sells?--Bloomberg
- Oprah considering Clippers bid--ESPN
- Oprah Winfrey Regains No.1 Slot On Forbes 2013 List Of The Most Powerful Celebrities--Forbes
- Bloomberg Billionarires--Bloomberg
- The Real Problem with the Comcast Merger--The New Yorker