2013年4月から垂直統合型システム製品「NEC Solution Platforms」を投入したNECは同ブランドの新製品を5月20日から販売を開始した。北米を皮切りにグローバルに販売し、2016年度に売上高100億円を目指す。
NECではこれまで販売してきたx86サーバ「Express5800」やメインフレーム「ACOS」など既存のハードウェアやソフトウェアなどとは異なる、クラウドサービス市場向けプラットフォームとして新モデルを開発。新サービスの企画や構築にかかる時間やコストを低減でき、それが製品の付加価値になると判断。大規模ホスティング事業者などが集中する北米、新しい大型データセンターが開設されている新興国からビジネスを開始し、その後日本を含めた全世界でビジネスを行う計画だ。
北米とアジア太平洋から販売
NECではクラウドサービス事業が拡大し、2015年には全世界の市場の中でクラウドサービスがオンプレミス型を逆転。2017年には8割を占めるまでに拡大すると試算している。
それを受けて、これまでは従来型システム市場向けに開発されたハードウェア、ソフトなどを組み合わせて提供してきたクラウドサービス向けシステムを専用に開発し、投入することを決定した。

NEC 執行役員 福田公彦氏

NEC ITプラットフォーム事業部 事業部長 西村知泰氏
「新市場が拡大しているのにあわせ、新市場に最適な製品が必要と判断。サービスコスト低減、導入コスト削減、運用コスト削減を実現し、データ分析やIaaS、ホスティングサービスに最適となる新プラットフォームを提供する。販売ターゲットも、クラウドの先進ユーザーが多い北米、新規データセンター開設が進むAPAC(アジア太平洋)地域の事業者をターゲットとする。販売支援体制についても北米、APACからグローバルに拡販するための組織を新設し、EMEA(欧州中東アフリカ)地域についてはパートナー連携で販売体制を強化する」(NEC 執行役員 福田公彦氏)と新しい体制で新市場に挑む。
今回発売したのは、ホスティングサービス基盤向けの「Cloud Platform for Dedicated Hosting」、IaaS基盤向けの「Cloud Platform for IaaS」、ビッグデータ分析サービス基盤向け「Data Platform for Hadoop」の3製品。for Dedicated Hostingは7月末に北米、APAC、日本で発売し、価格が5000万円からと決定しているが、他の2製品は2014年12月から出荷開始予定で、価格は現段階では未定となっている。
今回の製品では、サーバ向け64ビットの低消費電力SoC「Atom C2000」シリーズやソリッドステートドライブ(SSD)を標準で搭載している。クラス最高級という集積度と省電力化を実現しているという。1ラックには700台のサーバを収容でき、1ラックあたりで5600コア、メモリが22Tバイト、SSDが90Tバイト、合計ノード間のネットワーク帯域が3.5Tbpsになる。
2.5GbEthernet(GbE)を採用することで、10GbEに比べ電力を抑えながら、スケールアウト型のデータ分析基盤に求められるネットワーク環境を実現している。2000ラック規模で、北米でホスティングサービスをしている事業者の場合、おおよそ3割のファシリティ費用を削減できるとしている。

Cloud Platform for Dedicated Hosting
また、NEC中央研究所の先進研究成果である、電力を使わずに熱を移送できる「相変化冷却」技術を応用した冷却ユニットを初めて製品化した。相変化冷却ユニットは、熱い空気が上昇する特性を生かし、NECの独自配合の冷媒の相変化を利用して熱を室外に排出する。
「通常であれば、空調機器までサーバの熱を持っていくだけで電力を消費することになるが、こうした電力を使用する必要がなくなるため、データセンターの空調電力を30%削減することに成功した」(NEC ITプラットフォーム事業部 事業部長 西村知泰氏)
加えて、分散処理に最適なハードウェアとオープンソースソフトウェア(OSS)ベースの基盤を組み合わせて、最新機能を取り込んだクラウドサービス基盤を低コストかつ早期に導入できるという。ビッグデータ分析基盤には分散並列処理プログラミングフレームワーク「Hadoop」を、IaaS環境には「OpenStack」を、分散ストレージ「Ceph」を搭載している。導入期間が最大で6分の1程度に短縮できるとNECでは試算している。
NECでは「これだけ高集積型の製品は、日本よりも進んでいる北米の方が導入実現しやすい。ノウハウなどを蓄積し、グローバルでビジネスをしていきたい」(西村氏)と話している。
2016年度にはこの製品で売上高100億円を目指すが、割合としては日本国内1に対して、海外3の比率となると見込んでいる。