海運向けの気象サービスから始まったウェザーニューズ。最近では誰でも“サポーター”として観測に参加できるモバイルアプリでも有名だ。独自に開発した観測機器を配布し、観測用の衛星を打ち上げている。同社の取締役兼システム開発主責任者(CIO)である山本雅也氏に、同社の業務内容や取り組み、今後の展開などについて話を聞いた。
気象に関連するリスクを最小化
--ウェザーニューズはどのような会社か。
ウェザーニューズ 取締役兼システム開発主責任者(CIO)山本雅也氏
天気予報というよりは、気象に関連するリスクをできるだけ小さくするサポートをしています。気象予測をするケースもあれば、気象データを解析してどんなリスクがあるか、あるいはチャンスがあるか、それを個人から企業、国まで、それぞれの立場の顧客に知らせる会社です。これを「リスクコミュニケーション(RC)サービス」と呼んでいます。RCサービスは、海、空、陸、生活の4つの分野、44の市場に提供しています。
--特に注力している分野は。
海運が大きいです。交通関係は気象の影響を受けやすく、最近では台風による大きな影響がありました。夏の台風、冬の積雪をはじめ、季節に応じて要因があり、影響を受けることによるインパクトがあります。それを少しでも小さくしようということが狙いです。
気象の中には、安全性や経済性に関連するような要因もあります。定時性を守ったり快適性を担保したりなどの価値を顧客に伝えていくという意味で、一番インパクトが大きいのは交通分野です。その中でも一番売り上げが大きく多様なサービスを提供しているのが海運です。船の安全性や定時性、経済性に着目した形でいろいろなサービスを提供しています。
航空も海運と同様に市場がグローバルですが、新しい価値があればそれに見合うサービスを開発、提供していきます。例えば、道路や鉄道はその国の法律を遵守しなければなりませんが、船や飛行機は国から国へと移動します。しかし、公海を航行する際は問題ないものの、多くの国の領空や領海に入るときには領土内の政治的な問題など制約を受けやすくなります。そこまで細やかに見ないと価値を見いだせないこともあります。
海運の場合、「この種類の荷物をこの地点まで運ぶ」という航海計画を顧客の要望に基づいて作成します。その際に、安全性が第一であるのはもちろんですが、経済性を重視するのか、あるいは定時性にポイントを置くのかなど、要望にあわせて最適な航路を提案します。第二、第三の候補も挙げます。
船の通るルートとエンジンの回転数(スピード)から、目的地まで何日くらいで着くかや消費する燃料を計算します。顧客のビジネスの中でコストの判断ができるわけです。燃料のコストが高ければ、速度を落とした方が燃料を節約してコストを下げられます。また、実際の航海も計画に基づいて船を進めますが、天候やトラブルなどで船の速度が変化することがあります。それをモニターして、何かあったのかを診断して、必要があればプランを修正します。
出発時には詳細が分からないことももちろんあります。例えば、入港する港の荷役作業が混み合っていて、2日間沖待ちしなければならないとなると、計画通りのスピードで航行しても無駄に燃料を食うことになってしまいます。そこでスピードを落として、沖待ちせずに港には入れるようにスケジュールを変更するなどの提案もしています。
さまざまな要素から航路を提案する(ウェザーニューズ提供)