セールスフォース・ドットコムは9月18日、東京・丸の内のJPタワーホール&カンファレンスで「AppExchange EXPO 東京」を開催した。最新のクラウドを紹介する同社のプライベートイベントと位置付けており、PaaS/SaaS「Salesforce1」対応のモバイルアプリケーションをはじめとしたパートナーソリューションの最新事例、エコシステムの最新動向を紹介した。
37にのぼるISVパートナーによるセッションでは、Salesforce1対応アプリケーションや顧客情報管理システム(CRM)連携ソリューション、業務アプリケーションなどのパートナーソリューションが実践的な活用事例として説明された。展示会場では、16社が提供しているSalesforce1対応アプリケーションなど、39社のパートナー各社の最新アプリケーションを体験できる内容としていた。Salesforceユーザーグループ会員限定のカスタム分科会も開催され、Salesforce1の活用に関して情報交換が行われた。

セールスフォース・ドットコム 取締役社長兼COO 川原均氏
コインの表と裏の関係
基調講演では、セールスフォース・ドットコム取締役社長兼最高執行責任者(COO)の川原均氏が「モバイルアプリケーションが花開く『革新的なクラウドプラットフォーム』」をテーマに、Salesforce1プラットフォームを活用した、顧客との新たな関係を構築するアプリケーションの最新事例を紹介してみせた。
川原氏は講演の冒頭、「AppExchange EXPO 東京の主役は、AppExchangeのパートナー。AppExchangeパートナーとセールスフォースは、コインの表と裏の関係である。アプリケーションを開発するパートナーが表であり、プラットフォームとして支える役割を担うわれわれが裏になる」とパートナーとの関係を表現した。
「プラットフォームはどんどん広がりをみせている。6月には日本でも“ExactTarget Marketing Cloud”を発表し、“(アプリケーション構築フレームワークの)Salesforce Wear”も発表している。Microsoftとのグローバルでの長期的なパートナーシップも発表した。10月から11月にかけて、さらに新たなものを続々と発表するだろう。こうした新たな取り組みが社会を変えていくことになる」
米Salesforce.com最高経営責任者(CEO)のMarc Benioff氏が、かつてAppleでインターンをやっていたことがあり、その関係で故Steve Jobs氏にBenioff氏が商標登録していた「App Store」の名称を譲渡したというエピソードを紹介し、「AppExchangeは、AppleがBtoCでやっているApp Storeの仕組みをBtoBに展開しているもの」と説明した。
「現在、AppExchangeには、2300種類以上のラインアップ、250万本以上の購入実績がある。米国のスタートアップ企業の多くは、(購入者がパッケージの封を破ることで使用許諾契約に同意したとみなす)“シュリンクラップ型”でアプリを投入するのではなく、AppExchangeのプラットフォーム上で提供し始めている。営業やコラボレーション、マーケティング、カスタマーサービスといった領域に広がっているほか、日本でも、業界に特化したり、深化したりするアプリが増加している。AppExchangeでは、利用者の評価などが表示されており、透明性を持たせている。エコシステムを成り立たせる上では透明性は重要である」

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深化した業界特化型のアプリケーションとして、陣屋が展開している「陣屋コネクト」を紹介した。自らの導入ノウハウを活用しながら、旅館での導入効果などを説明した。千葉市が導入した「ちばレポ」では、サービスを発表して以来、40の市町村から問い合わせがあったことを紹介した。
「公園のベンチが壊れていた際には、それを見つけた市民が市役所まで出向いて書類を書いて、修理を依頼するという形だったが、それを何人がやってくれるのか。千葉市では、モバイル端末から申請し、しかもこれを見つけてくれた人にポイントを付与するような形で住民サービスを充実させるといったことも考えている。これをクラウドで提供できる、AppExchangeでも提供できる。日本の社会の生産性が上がることになる」
国内クラウド市場は引き続き高い成長をみせており、富士通総研の調べによると、年間20兆円の国内IT市場でクラウドは6%を占めており、今後数年で20%にまで拡大することを示しながら、クラウドがエンタープライズの領域に入ってきていることを強調。以下のように語り、クラウドの進化の過程を示した。
「セールスフォースは、SaaSの市場で30%のシェアを持ち、ビジネスクラウドの標準プラットフォームとなっている。毎年、米サンフランシスコで開催しているイベント“Dreamforce”では、新たなメッセージを出している。それがクウラドの進化を示している。当初はビジネスクラウドといっていたが、それが社内コラボレーションになり、その後、マーケティングクラウドへとメッセージが変わってきた。ここ数年語っているのは、モバイルとビジネスプラットフォーム。10月13日から開催するDreamforceでも、同様のメッセージが発信されることになるだろう」
地方創成クラウド基盤の考え方を示し、「地方で暮らすにはさまざまな不安がつきまとう。病気をしたときにはどうするのか、学校はどうするのか。クラウドを利用することでこうした問題も解決できる。静岡市と取り組んでいる防災システム、コニカミノルタの在宅介護支援システムなどはそうした事例のひとつ。まち、ひと、しごとを創成するためにクラウドを活用できる。こうしたことをAppExchangeのプラットフォームを活用して実現したい」と語った。
講演では、モバイルでのデモストレーションも実施した。「ウェブでもモバイルでもシングルサインオンできること、Salesforce1に簡単に移植できるプラットフォームであること、共通に利用できるChatterが、セールスフォースのモバイルにおける特徴」とし、名刺管理システムの「スマートビスカ」、地図とスケジュールを連携した「UpWard」や「rakumo」の連携利用を実演した。
川原氏は「すべてのモバイルをサポートし、最新のビジネスプラットフォームへと進化させていく。それによって、社会の生産性を上げることに貢献していきたい」と意気込みを語って、講演を締め括った。