「われわれの課題は、どうやって飛行中のジャンボジェットを組み立て直すかだ」
「Microsoft Office」に取り組むMicrosoftのディスティングイッシュドエンジニアIgor Zaika氏は、同社のOfficeチームが直面する難問をこう説明した。Microsoftは、どのように10億人のOfficeユーザーのサポートを継続し、混乱させないようにしながら、Officeの核となるインフラを再構築して「Windows」以外のOSでも動くようにしたのだろうか。
Zaika氏は最近、Facebookの@Scaleカンファレンスで、Officeのクロスプラットフォームアーキテクチャ戦略について語った(TwitterユーザーWalking Cat氏の、同氏のプレゼンテーションへのリンクに感謝する)。その50分間のセッションで、Zaika氏はMicrosoftがどのようにC++を使ってOfficeをWindows、Apple、「Android」、ウェブで構築しているかについて詳しく説明した。
同社が30年前に作り始めたOfficeは、現在では数千万行のコードからなっている。Officeは、Cで書かれた数多くの独立したアプリケーションからスタートした。Microsoftは1990年にこれをひとまとめにしたが、Zaika氏によれば、当時はアプリケーション間で共有されているコードはほとんどなかったという。開発チームは当時、Officeを書き直して、Windows用OfficeとMac用Officeの共通コードベースを作るのが望ましいと考えた(Microsoftは1985年にMac版を別個に発売している)。
「非常に困ったことに、これはうまくいかなかった」とZaika氏は話す。
開発チームはWindowsとMacの共通のコードを一部は救い出したが、Macユーザーは、他のMacのアプリケーションとは見た目も動作も異なるOfficeを好まなかった。
Officeチームは2年前からこの課題に新たな形で取り組んでおり、コードの共有はいいが、共有コードが多すぎるのはよくないと考えているとZaika氏は語った。
今回、Officeチームは複数の小規模なプラットフォーム抽象化層(PAL)を設計し、サポートするさまざまなOSで、ユーザー体験を実現するコードを、どのように、どの程度共有するかという問題について、賢明な選択をしようとしている。
社内にはMicrosoftがOfficeのコードベースをフォークさせて、異なるブランチと各OSをサポートする専門のチームを作るべきだと考える者もいたが、Zaika氏によれば、Offceチームは現在このアプローチを採っていない。Microsoftは、1997年にWindowsとMacでOfficeのコードベースを分離した際にこの手法を用いたが、現在はやっていないという。またOfficeチームは、「最小公倍数」的アプローチも選択しなかった。ユーザーは、各OSが持つプラットフォーム独自の機能を、最大限に利用したいと考えているのだ。
Officeチームはこれを実現しようとしている。同チームは、可能な場合には機械的なリファクタリングを行い、そうでない場合にはユニットテストを行いながら、明確に定義された、組み合わせ可能なコンポーネントを作っている。重視しているのは、すべてのプラットフォームで常にすべてが正常に動作する状態を維持することだと、Zaika氏は言う。開発チームは、どのプラットフォームでもリグレッションを一切許容せず、すべてのプラットフォームに関して、社内で大規模にコードベースのドッグフーディング(訳注:社内で実際に試用させること)を行っている。