アジア太平洋日本の拠点が25周年--SAPの「クラウドカンパニー」への舵取り - (page 3)

末岡洋子

2014-10-31 07:00

顧客と共同開発するCo-Innovationアプローチ

かつて日本法人の社長兼CEOを務め、現在はグローバルセールス担当プレジデントを務めエグゼクティブボードメンバーでもあるRob Enslin氏
かつて日本法人の社長兼CEOを務め、現在はグローバルセールス担当プレジデントを務めエグゼクティブボードメンバーでもあるRob Enslin氏

 Enslin氏とFox-Martin氏は、製品開発やロードマップにあたってSAPが取る手法、Co-Innovationプログラムにも触れた。顧客と共同で開発することで、その顧客の問題やニーズに応じた製品を作り、その後汎用性のある製品にするというものだ。

 会期中にシンガポールで開催されていた世界テニス協会(WTA)の「BNP Paribas WTAファイナル」では、WTAと14カ月がかりでのCo-Innovationにより開発した「Match Insight」を利用。ボールの速度、スピン数、サーブボールの位置はもちろん、選手のポジションを示すヒートマップなど試合のさまざまなデータを収集して分析する「Post Match Analysis」が活躍している。

 HANAを利用したビックデータ分析から割り出した試合のデータを選手やコーチが試合後に利用することで、次の試合やパフォーマンスの改善に役立てることができるという。この経過に満足したWTAは会期中、2015年より試合中に「オンコートコーチング」として同アプリの利用を認める方針をSAPと共同発表した。予定通りであれば、来年より試合の休憩時間、選手がコートを呼んでビックデータ分析を利用した情報の利用が可能になる。

 WTAとの提携を通じて、SAPは公式アプリも作成した。特定のハッシュタグを付けたツイートに選手がサインした仮想サインボールをプレゼントしたり、試合中に多面的にショットを分析できるバーチャルリプレイなどのコンテンツが含まれている。ファンとのエンゲージを高めるというWTAの狙いと、BtoP(Business to People)としてコンシューマーへのリーチ拡大を戦略に掲げるSAPの狙いの両方に合致するものだ。

 Match Insightはスポーツ分野に限定されない。「IoTでデータを収集してリアルタイムで分析するという点では、医療分野などさまざまな業界に応用できる」とEnslin氏。センサなどからデータを収集するモノのインターネット(IoT)では、物流や製造のほか、「牛にもチップが埋め込まれている」という。このような技術革新を利用できる先進的ソリューションを提供することで、「今後もAPJの顧客やコミュニティにとって重要な役割を担うパートナーであり続ける」と述べた。

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