(Tim Cookの「ゲイ告白」の話題に触れたBloomberg TV番組の一コマ。呼ばれて話をしているのはBloomberg Businessweek編集長のJosh Tyrangiel。「Cookの方から電話があって今回の寄稿記事掲載に至った」などと話している。Tyrangielは9月にBusinessweekが特集・掲載していたCookの独占インタビューでも、取材の場に同席し、記事の共同執筆者にクレジットされていた。そのつながりが今回の公表にあたって、Businessweekの選択につながったのだろうか)
すでに各所で報じられている通り、Appleの最高経営責任者(CEO)であるTim Cookが、ついにゲイ(同性愛者)であることを自ら打ち明けた。(CookがBusinessweekに寄稿した手記の中味については、ZDNet Japan記事『アップルのT・クックCEO、同性愛を告白--「ゲイであることを誇りに思う」』を参照願いたい)
Cookがゲイであることは近年ではなかば「公然の秘密」という感じで、その分野の専門媒体(?)である「Out」あたりでCookが「世界でもっとも影響力のあるゲイ男性」と呼ばれていたことなども知られていたけれど、やはりセンシティブな事柄であるせいか、自分の方からそのことに触れよういう人間は誰もいなかった。
例えば、Cookが昨年暮れに行った母校関係者への講演のなかでそのことを匂わせるような発言をしたり、今年夏にLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、ジェンダークィア)権利擁護の行進(”Pride Parade”)に社員とともに参加したといったニュースを報じた際にも、はっきりとそのことを口にする者はいなかった。
あるいは、6月末にCNBCのあるアンカーが「Cookはゲイであることをとてもオープンにしていると思う」などとうっかり口を滑らせた時には、出演者全員が一瞬凍り付くといったこともあった。だが、いずれにしてもそういう「本人待ち」――本人が言い出さなければ敢えて話題にしない、という雰囲気が米国のメディアではずっと続いていたという印象がある。
Tim Cook receiving the IQLA Lifetime Achievement Award [NYT's Stewart: Evaluating gay CEO's] (1分前後のところに、全員が凍り付く場面がある)この話題に触れたThe NewYork Times(NYTimes)のある記事には、Deloitteが実施したある調査(調査時期は不明)の結果――「LGBTであることを職場で明かしていない人間の割合が回答者全体の83%に上った」が紹介されている。また別の記事にはY CombinatorのSam Altman――「近ごろ売り出し中」の社長――の「ゲイである自分は昔ながらの“男の世界”であるベンチャーキャピタリストの世界で受け入れられないのではないかと、高校時代にはそんなふうに思っていた」というコメントもある。アルトマンはまだ29歳というから、高校時代といってもそれほど昔の話ではない。
こうした調査結果やコメントは、Cookの告白がいかに勇気を必要とすることであったかを物語るものと思える。Businessweekに寄稿した手記のなかで、Cookは「職場の同僚には以前からそのことを話してあった(隠してはいなかった)」などと書いているが、世間への公表にこれだけ時間がかかったのは、やはりそれなりの軋轢が生じると懸念していたことの表れとも感じられる。
また「ゲイであることは、神が私に与えてくださったもっとも素晴らしい贈り物のひとつと私は考えている」(”I consider being gay among the greatest gifts God has given me.”)というCookの言葉を目にして腰を抜かしている人間も、おそらくキリスト教社会のなかには存在するのではないか。