ところが、そんな大方の見方を覆すような話が翌日(11月5日付)にWSJで報じられた。Xiaomiの売り上げが昨年270億元(1米ドル=約6元として、ざっと44億ドル)に達しただけでなく、利益も前年の18億8000万元から34億6000万元(同5億6600万ドル)とほぼ倍近くに増えたこと、今年は利益がさらに75%も増える見通しであることなどが、この記事から明らかになった(情報源は「Xiaomiと融資の交渉を進めている香港の銀行筋」とされているが、銀行側が勝手にこんな情報を漏らしたら、それこそ守秘義務違反で訴えらるだろうから、Xiaomiによるリークの可能性が高い)。
競争の激しいスマートフォン市場、しかもコモディティ化が顕著なAndroidの世界で、薄利多売で台頭してきたとみられていたXiaomiが「すでに立派に利益を稼ぎ出している」。このニュースが注目を集めていた理由はそこにある。
このWSJ記事には、XiaomiとSamsung、Appleを比較した興味深い表が含まれている。比較項目は5つ――年間売り上げ、同純利益、粗利率、税利払い前利益率、そして第3四半期の全世界スマートフォン出荷台数シェアの5つで、これをみるとXiaomiの粗利率は20%弱(SamsungやAppleのほぼ半分程度)、また税利払い前利益率は10%強となっている。
後者の比較については、Appleが30%弱、Samsungは10%台後半とされている。売り上げや利益の額は比較にならないが――Samsungが全体で2000億ドル超、Appleが1800億ドル超(約1828億ドル)――、出荷台数ならび市場シェアの伸びと利益率とを含めて考えると、この先大手2社にとっても手強い競争相手になりそうな可能性も伝わってくる。
この表のすぐ後には「Xiaomiの売り上げの94%が端末販売からのもの」という一文もあり、同社がハードウェアの販売だけで十分利益を出せる態勢を作っていることも伺える。
さらに、この表の少し前の部分には、Xiaomiの販管費(マーケティングや販売にかける経費)が極めて低いことを物語る数字も書かれている。同社の売上全体に対する販管費の割合は2012年が3.9%、2013年が3.2%だったという。
ある程度高機能でかつ手頃な値付けの上位機種や、100ドル台前半の低価格機種だけしか扱っていないXiaomiが、それでも十分な利益を出せる秘訣はどうやら、この辺りにありそうだが、あいにくと販管費の占める割合を会社ごとに比較した数字というのはまだ目にしたことがないため、断定するのは難しい。
Xiaomiの販売手法に関する話――携帯通信事業者の流通網に頼らず、オンラインでの「台数限定発売」で希少感を演出しているといった事柄に触れた話もよく目にするが、そうしたやり方で1四半期に1730万台もの製品を販売するというのも大したものと思える。
混戦をどう勝ち抜くか
今回発表されたCanalysのレポートでは、Vivoというブランドでスマートフォンを販売するBBK Communication Technologyというメーカーが出荷台数ランキングの6位に顔を出している点も目を惹く(新型iPhoneの投入が10月=第4四半期にずれ込んだAppleは7位)。出荷台数シェアはまだ6%(Xiamiの約3分の1)だが、伸び率は前年比3倍でXaomiと肩を並べているという。
Samsungが、フィーチャーフォンからスマートフォンへのシフトの波に乗るかたちで、NokiaやMotorolaからシェアを奪ったのがほんの2~3年のことだったはずだが、そのSamsungがすでに首位から陥落し、さらに新しく首位になったXiaomiでさせ脅かしそうな勢いのある別のメーカーが台頭している。この辺りに中国のスマートフォン市場、とくにAndroidメーカー同士の混戦ぶりがよく表れているようにも思える。
「Xiaomiには熱狂的なファンがついている」という話も比較的以前からよく報じられているもののひとつだが、そうしたファン層を今後どこまで拡大できるのかというのはよく分からない。また「MIUI」という独自のインターフェース(シェル)を特徴=差別化点のひとつに挙げる記事も時々目にするが、そうしたものが「Xiaomiにしかできない」というわけでもなかろう。
さらに、ユーザーつなぎとめに存外大きな役割を果たすエコシステムといったものの存在もまだとくには聞かない(テレビコンテンツの確保に力を入れている、という話はある)。そうしてまた、ソーシャルメディアを重視したマーケティングについても、すでに他社の追従(モノマネ)が始まっているという。
[Introducing MIUI 6: Visually Stunning, Stunningly Simple]