本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NECの石井正則 執行役員と、SAPジャパンの堀田徹哉 バイスプレジデントの発言を紹介する。
「中堅・中小企業のクラウド需要はこれから本格的な波がやってくる」 (NEC 石井正則 執行役員)
NECの石井正則 執行役員
NECが先ごろ、x86サーバ「Express5800シリーズ」において、クラウドサービスをパッケージ化した「Express5800/CloudModel」を発表した。同社執行役員でプラットフォームビジネス本部長を務める石井氏の冒頭の発言は、この新製品を投入した狙いについて語ったものである。
Express5800/CloudModelは同社のクラウド基盤サービス「NEC Cloud IaaS」の3年間の利用権をパッケージ化し、CPUやメモリ、HDD、OSを組み合わせた50種類のラインアップから選択可能にしたものである。サービス利用開始時の初期設定や移行作業などが容易で、中小規模システムのクラウド導入、運用に適したパッケージ商品となっている。
新製品の詳細な内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは石井氏が説明した新製品にまつわる市場背景や投入の狙いに注目したい。
石井氏は国内のIT市場動向について、IDC Japanの調査結果から「企業のIT投資におけるクラウド比率は2016~2017年に1割を超えると推定される」ことを挙げ、「一気にクラウド化が進むのではなく、従来型のITシステムとクラウド利用の混在環境が今後も続く」との見方を示した。
また、企業ユーザー調査から「システムごとに積極的にクラウドへ移行したい業務と、従来の個別システムに適した業務が存在する」との回答率が高かったこと挙げ、「今後はシステムごとの特性に応じた使い分けが求められる」とも語った。
そうした中で、石井氏はNECにおける今後のITシステムの方向性について、「外部保有に適した業務システムから順次クラウドを活用し、オンプレミス環境に残る業務とのシステム間連携によって新ビジネスを創出していきたい」と説明。「オンプレミス環境とクラウド環境のハイブリッド運用が主流になっていく」との認識を示した。
さらに、企業規模別のクラウド活用の進展については、「大手企業を中心にプライベートクラウドの導入が進みつつあるが、中堅・中小企業でクラウド活用が本格化するのはこれからだ」との見方を示し、今回の新製品はとくに中堅・中小企業を対象にしたものであることを明らかにした。
石井氏はその上で、「Express5800シリーズはハイブリッド環境の基盤として、今後もたゆまぬ進化を続けていく」と強調。クラウドサービスとハードウェアを組み合わせた製品を今後も順次投入していく姿勢を示した。