今回の新製品は、x86サーバとして国内最大級の顧客基盤を持つExpress5800シリーズならではのアプローチといえる。しかもx86サーバ用OS「Windows Server 2003」のサポート終了に伴う新たな需要も見込めそうだ。果たしてどれだけユーザーに広く受け入れられるか。クラウド時代のサーバの進化という観点からも注目しておきたい。
「HANAは競合製品がない世界へ突き進んでいる」 (SAPジャパン 堀田徹哉 バイスプレジデント)
SAPジャパンの堀田徹哉 バイスプレジデント
SAPジャパンが先ごろ、インメモリ情報システム基盤である「SAP HANA Platform(HANA)」の新版(SP9)を国内で提供開始すると発表した。同社バイスプレジデントでソリューション&イノベーション統括本部長を務める堀田氏の冒頭の発言は、HANAが独自の存在として進化していることを強調したものである。
HANAの新版では、オンプレミスとクラウドの環境で複数のデータベースのワークロード管理を可能にするマルチテナント機能や、インメモリに最適化されたテーブルに加えてディスクに最適化されたテーブルの利用を可能にしたダイナミックデータティアリング機能などが追加された。
新版の詳細な内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは堀田氏が語ったHANAの進化について取り上げておきたい。
堀田氏によると、HANAの顧客数は現在、全世界で4300社を超え、日本における今年度のHANA関連ビジネスの売り上げは前年度に比べて180%成長する見通しだという。
そんな急成長を遂げつつあるHANAは、市場に登場して4年になる。当初はインメモリデータベースが代名詞だったが、今ではOLTP(オンライントランザクション処理)などの基幹系とOLAP(オンライン分析処理)などの情報系のアプリケーションを単一基盤で実行できる「インメモリ情報システム基盤」へと進化してきている。
今後についても、「クラウドへの対応」「あらゆるアプリケーションの基盤」「ビッグデータとIoT(Internet of Things)への対応」「オープン性の追求」といった4つの観点を中心に、たゆまぬ機能拡張を行っていく構えだ。
そこで筆者は発表会見の質疑応答で、「HANAの競合相手はどこか」と敢えて聞いてみた。すると、堀田氏は次のように答えた。
「HANAがカバーしている範囲は非常に広い。データベースやアナリティクスなど個々の領域では競合製品もあるが、インメモリ情報システム基盤としては競合製品のない世界へ突き進んでいる」
SAPは創業以来、「ERP」(統合基幹業務システム)を代名詞にしてきたが、ここにきてHANAを前面に押し出している。それはすなわち、SAPがオンプレミスのアプリケーションベンダーから、クラウド時代のプラットフォームベンダーへと移行しつつあることを意味している。このダイナミックな転身ぶりは、他のエンタープライズベンダーも見習うべきところがあるだろう。