本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、大塚商会の大塚裕司 代表取締役社長と、OpenStack FoundationのMark Collier COO(最高執行責任者)の発言を紹介する。
「ウェブサービスもクラウドサービスも同じ。言葉ではなく中身で勝負していきたい」 (大塚商会 大塚裕司 代表取締役社長)
大塚商会の大塚裕司 代表取締役社長
大塚商会が先ごろ、2014年度(2014年1~12月)の決算を発表した。大塚氏の冒頭の発言は、その発表会見で、クラウドサービス事業への取り組みについての質問を受けた際に、自社の姿勢を明らかにしたものである。
同社の2014年度の連結業績は、売上高が初めて6000億円を超え、5期連続の増収増益を達成するなど、まさに記録的な結果を示した。とりわけ、第1四半期(1~3月)に「Windows XP」の買い換え需要に伴うシステムの更新や消費税増税前の駆け込み需要がピークを迎え、好調に推移したのが好決算につながった。
決算内容の詳細については関連記事を参照いただくとして、ここではクラウドサービスにまつわる大塚氏の発言に注目したい。
その前提として、同社の事業内容をあらためて見ておくと、大きく2つに分けられる。1つは、コンサルティングからシステム設計や開発、搬入設置工事、ネットワーク構築まで幅広く手掛けるシステムインテグレーション事業。もう1つは、サプライ供給、ハードウェアとソフトウェアの保守、電話サポート、アウトソーシングサービスなどによって導入システムや企業活動をトータルにサポートするサービス&サポート事業である。
クラウドサービスはこのうちサービス&サポート事業の範ちゅうだが、同社ではどのサービスも「クラウド」とは呼んでいない。クラウドサービスに相当する事業としては、ASP(アプリケーションサービスプロバイダ)形式の各種ウェブサービスや調達サービス、システム運用・監視・管理を行うマネージドネットワークサービスなどを展開している。
大塚氏によると、「ウェブを利用して各種サービスを提供する形式は、ユーザーから見ればクラウドだろうとASPだろうと、サービス内容がよければ関係ない」。同社のウェブサービスは2014年末で164万人以上の利用者数に達しており、「当社は有力なウェブサービス会社の1つだ」と語り、冒頭の発言が続いた。
とはいえ、大塚氏は、中小企業にとって望ましいクラウドの利用形態について問われると、「メールをはじめとした情報系処理は、クラウドを利用したほうがコストメリットを出せるケースもある。一方、基幹系処理はオンプレミスのほうが有利な場合も多い。基幹系処理ではデータのバックアップ手段としてクラウドを利用するケースも増えてくるだろう。いずれにしてもクラウドかオンプレミスかという二者択一ではなく、ハイブリッド形式をうまく活用するのが望ましい」と説明。
昨今のクラウド事情への精通ぶりをうかがわせた。