確かに「クラウド」という言葉の解釈は今もまちまちなのが現状だ。したがって、同社がウェブサービスを始めた当初から使っている「ASP」という言葉を大事にしているのは、ユーザーから見ればブレのないようにも映る。そこが中小企業から信頼されている大塚商会ならではの「立ち位置」なのかもしれない。
「OpenStackをIT変革のエンジンに育て上げていきたい」 (OpenStack Foundation Mark Collier COO)
OpenStack FoundationのMark Collier COO
クラウド関連企業など22社および団体が加盟する日本OpenStackユーザー会(JOSUG)が先ごろ、オープンソースのクラウド基盤構築ソフトウェアである「OpenStack」をテーマにしたカンファレンス「OpecStack Day Tokyo 2015」を都内ホテルで開催した。その基調講演に招かれたMark Collier(マーク・コリアー)氏の冒頭の発言は、OpenStackの普及に向けた意気込みを語ったものである。
OpenStackはベンダーに依存しないオープンソースソフトウェア(OSS)で、柔軟なモジュール設計やスケーラビリティ、互換性などの特徴が評価され、世界中の企業・団体のクラウド基盤に利用されつつある。ただ、本格的な普及はこれからということで、日本におけるクラウドサービスの利用者や提供者に対して、実用段階に入ったOpenStackの最新情報や利点などを訴求しようと企画されたのが、このカンファレンスである。
Collier氏がCOO(最高執行責任者)を務めるOpenStack Foundationは、2010年に米国で発足したOpenStackプロジェクトを母体として、2012年に設立されたOpenStackの開発やライセンスの管理を行う非営利団体である。その活動は、大手ベンダーをはじめ世界100カ国以上の企業・団体から支援を得ており、2500人以上の開発者が関わっているとしている。
Collier氏は講演で、「デジタル化が進む中で、あらゆる企業が新たな競争に向けて、ソフトウェアを駆使して迅速にビジネス価値を生み出していくことが求められるようになってきた」と語り、「そのIT変革を担うクラウド基盤には、オープンな標準技術がますます求められるようになってきている」と強調。そして冒頭の発言が続いた。
同氏は今後の課題として、OpenStackベースのアプリケーション開発をさらに強力に押し進めていく必要があると指摘。「そのためにもOpenStackの相互運用性や安定性を一層向上させていかなければならない。今後はOpenStack Foundationとしてもそれらの点に注力していきたい」と語った。
2013年から開催されている同カンファレンスは、今回が3回目で、2800人を超える事前登録があったという。1回目からおよそ3倍の登録者数となった今回のカンファレンス会場の雰囲気は、筆者の印象では同じOSSであるLinuxの当初の盛り上がりぶりとよく似ていた。果たしてOpenStackがLinuxと同様の存在感を持つようになるか、注目しておきたい。