ユーザベースは、世界各国の企業情報、市場規模など業界動向を提供する「SPEEDA」を提供。4月1日に分社化した子会社「ニューズピックス」が手掛けるコメント機能を搭載したスマートフォン向け経済ニュース「NewsPicks」の2つのサービスも提供してきた会社だ。今回は、同社の最高技術責任者(CTO)である竹内秀行氏に、同社の特長や体制、システムなどについて話を聞いた。
--ユーザベースは、どのような会社か。

ユーザベース 最高技術責任者(CTO) 竹内秀行氏
ユーザベースは2008年4月に創業した、今年で7年目の会社です。現在は「世界一の経済メディアをつくる」というミッションを掲げ、「SPEEDA」、4月に分社化した企業のサービスですが「NewsPicks」というサービスを提供しており、基礎を作りました。
サービスの内容としては、SPEEDAは主に金融機関向けや証券会社、コンサルティングファーム向けに、企業の情報や業界の情報を集めて、それを見やすい形で顧客に提供する有料サービスです。金融アナリストやコンサルタントが企業や業界分析に利用したり、リサーチャーにとっては業界動向や市場規模、マーケットシェアを調査、営業マンには、取引先調査など、さまざまなビジネスシーンで利用されています。起業当初から持っているサービスで、約500社が導入しています。最近では、事業会社の経営企画室が導入するケースが増えています。
NewsPicksは、主にスマートフォン向けに経済のニュースを集めて、それに対してコメントを付けられるサービスとなっています。現在はコンテンツを作りつつ、プラットフォームも提供し、広告と課金によりビジネスを展開しています。SPEEDAの売り上げである程度の財務基盤ができたので、代表の梅田優祐の意向でBtoCのニュース媒体を始めた形であり、収益構造にははまだ改善の余地があります。
SPEEDAは有料サービスなので、約160人の社員のうち約120人をSPEEDAの事業に振り分けています。もともとの市場への導入がほぼ終わって、顧客ごとのID数を増やすことに取り組んでいる状況です。一方、それでは頭打ちになるので、現在は新たなニーズとなっている事業会社に対する売り方を考えています。NewsPicksはまだまだユーザー数を増やす段階で、売り上げについてはこれからという状況です。
--SPEEDAの強みは。
さまざまな会社の財務状況などの情報が容易に入手できる点です。これらの情報は以前は、企業の売上高でさえも入手することが行政のウェブサイトや、図書館などから探さざるを得ず、面倒くさかった。例えば有価証券報告書などは、ひとつの有価証券報告書の中では、ある決算の年とその前年度のデータしか入っていません。それを時系列で10~20年というスパンで見ることができます。
また、SPEEDAが一番最初に売れた理由は、その業界をユーザベースのアナリストが解釈して定義したところだと思っています。業界を定義づけ、そこに属する会社をひも付けしたので、その業界のプレーヤーが誰かがすぐにわかります。さらに会社の情報だけでなく、業界を全体的に俯瞰した情報もレポートとして提供しました。そもそもデータを取得することがものすごく大変な領域なので、そこの参入障壁が高いサービスです。データの取得を真面目にやった結果だと思います。
具体的には、データを持っているところに足を運んで交渉するということを繰り返しました。一般に公開されている情報もありますが、それをまとめるだけでは価値が生まれません。最初はお金がなかったので、収益分配モデルでデータを入れてもらいました。彼らが提供しているデータは安くはありません。そこをユーザベースが一括して集めて、IDあたりの金額でワンストップ提供しているわけです。
中国をはじめさまざまな国のデータも見ることができ、1つの業界だけでなく周辺の業界も調べられます。また、業界の中身がどういう構造になっているかもわかります。それは、アナリストも雇ってレポートを書いているためです。ユーザーが欲しい形にして提供しているところがユーザベースの強みといえます。そもそも、ユーザベースの代表2人が使う側だったので、もっと使いやすくすれば売れるし、売り先も増えるだろうということで立ち上げたんですね。
地道に足を運んだという点では、NewsPicksも同様です。一番はじめに経済界の大御所と呼ばれる人たちに声をかけに行きました。代表の梅田は、常に外に出て声をかけて回っていて、堀江貴文氏に「このサービス面白いよね」と使ってもらったり、竹中平蔵氏にもアポを取って入ってもらったりと、地道な努力の積み重ねでSPEEDAもNewsPicksも成り立っています。それが逆に参入障壁になっていると思っています。
現在はシンガポールと香港、上海を海外拠点として選びました。そこはSPEEDAを販売する場所という位置づけです。データを買ってくるところは、インドネシアなどのASEAN地域、それぞれの国にデータを取り扱っている会社があるので、そこに社内の人間が足を運んだり電話でアポを取ったりして、契約してデータを獲得しています。
NewsPicksでは、ビジネスや経済の知見がある人達が意見を言い合う場だという世界を作ったことが、それなりに成功している要因だと思います。それがなかったら、他のコメントできるサービスと一緒で、どうしようもないコメントが集まるものになってしまっていたでしょう。