ダナンでも成長とこれを支える基盤とのギャップが顕在化
このように「住んで良し、遊んで良し、働いて良し」という非常に恵まれた環境を持つダナンですが、近年、進出企業の増加による問題も顕在化しつつあります。
ダナン日本商工会加盟企業数を見てみると、この1年間で加盟企業数は17社増えて83社(2015年3月5日時点)となりました。約25%の成長率を記録し、この成長率はここ5年間でも最大の伸びとなっています。ダナン日本商工会による会員増強の努力も無視できませんが、前述した日本との直行便就航も大きな要因の一つとなっているのではないでしょうか。
日本をはじめ他国の企業数も増加していることに伴い、オフィスや外国人居住ビルの不足が次第に顕著になってきていることが、1つ目の問題です。IT業の場合、「停電しないこと」「良好なインターネット回線があること」が事業実施に伴う最重要チェックポイントですが、このような条件を満たしたオフィスビルの数が十分ではなく、希望するオフィスへの入居がかなわないことがあります。
近年、外国人が安心して長期間滞在できる設備を持つビルの建設も進んでいますが、ベトナム人による投資対象として購入されることもあるため、同じ階の同じような部屋であってもオーナーの意向によって賃料が全く異なるということも珍しくありません。このような背景を知らいない外国人が借り手の場合、不可解に思うでしょうし、在住日本人の間でも笑い話として出てくることもあります。
2つ目の問題は、ダナンでも人材の奪い合いが始まっていることです。

ベトナムでも有数の大学であるダナン工科大学。日本の大学との連携のみならず、米国やフランスの大学とも連携しながら、国際的なレベルでの教育が行われている。
IT業では、ダナン大学をはじめとする高等教育機関から人材の供給を期待できますが、少しでも優秀で経験のある人材を確保しようと地元企業との奪い合いのみならず、日系企業同士でも引き抜き合いが始まりつつあります。
ダナンでは、ベトナムの情報通信業最大手であるFPT社を筆頭に、地元政府機関から独立した背景を持つSOFTECH社やUNITECH社といった地元では有名な大企業がいくつも存在しているため、これを超える存在感を日系企業が出すことは容易ではありません。日本語担当スタッフについても同様です。
主にダナン大学の日本語専攻を頼ることとなりますが、在籍している学生数はハノイやホーチミンと比べると圧倒的に少ないため、この分野においても優秀な人材の確保の困難さはハノイ・ホーチミンと変わることはありません。しかも前述の企業では大々的に日本からのオフショア開発業務も実施しているため、日本語担当スタッフも引く手あまたです。
このような背景があるためか、日系企業がダナンに新拠点を設立しようとするときに、すでに進出済みの競合日系企業のベトナム人キーパーソンを口説き、配下の優秀なスタッフとともに引き抜いてしまうという悪質な事例も耳にし始めました。ダナンにおける優秀な人材確保の困難さは、想像以上に深刻なのかもしれません。