本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NECの遠藤信博 代表取締役執行役員社長と、日本マイクロソフトの織田浩義 執行役常務の発言を紹介する。
「2015年度は“成長の年”。業績予想を確実に達成すべく注力したい」 (NEC 遠藤信博 代表取締役執行役員社長)
NECの遠藤信博 代表取締役執行役員社長
NECが先ごろ、2014年度(2015年3月期)の連結決算と2015年度(2016年3月期)の連結業績予想を発表した。遠藤氏の冒頭の発言は、その発表会見で、2015年度の業績予想の達成に向けた意気込みを示したものである。
全体の概要については関連記事を参照いただくとして、ここでは遠藤氏が達成に向けて意気込みを示した2015年度の業績予想の内容に注目したい。
NECにとって2015年度は、3カ年の中期経営計画の最終年度となる。同計画では「社会ソリューション事業への注力」「アジアへの注力、現地主導型ビジネスの推進」「安定的な財務基盤の構築」の3つを重点領域とし、売上高営業利益率5%、海外売上比率25%の早期実現を目指すとしてきた。
遠藤氏は同計画の2年が経過した中で、「国内の公共インフラ投資需要が拡大したことでいくつかの大型案件を獲得できた。一方、キャリア向けSDNやエネルギー市場の立ち上がりが遅れ、円高に伴う資材費上昇のインパクトも強まった」と、環境変化における好転と課題の両面を説明。そうした状況を踏まえたうえで、2015年度を次なる飛躍に向けた「成長の年」と位置付けた。
具体的な数値として掲げた2015年度の業績予想は、売上高が前年度比5.6%増の3兆1000億円、営業利益が同5.4%増の1350億円、経常利益が同7.0%の1200億円、当期純利益が同13.4%増の650億円。中期経営計画で掲げた数値と比べると、売上高で1000億円、営業利益で150億円下回るが、当期純利益は50億円上回る見込みだ。
さらに、売上高営業利益率は4.4%、海外売上比率は24%と、目標にもう少しのところまで迫るとしている。 遠藤氏は「事業の非連結化の影響がなくなり、これから増収増益に転じていく」と、今後の見通しが明るいことを強調した。
ここ5年ほどは事業の非連結化が続いて減収傾向にあった同社だが、2015年度はいよいよ反転攻勢に打って出る態勢が整った形だ。ただ、主戦場であるICT分野で競合するグローバルベンダーの業績好調ぶりと比べると、同社の2015年度の業績予想は少々慎重過ぎるのではないか。「成長の年」としながらも勢いが感じられない気がする。会見の質疑応答で、遠藤氏にそう単刀直入に聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。
「ご指摘の点については、われわれも相当な時間を費やして議論を重ねた。そのうえで、確実な実績づくりと成長の両面を熟慮して業績予想の数値を立てた。これによって全体の方向感を示すことができたと考えている」