あらゆるものがインターネットにつながる「Internet of Things」が注目を浴びている。IoTのほかに、Cisco Systemsの「Internet of Everything」、GE Softwareなど米国勢の「Industrial Internet」、独での「Industry 4.0」、Machine to Machine(M2M)と呼ぶこともあるが、概念の方向性は概ね一緒と考えていい。
OpenTextで製造、自動車業界を担当するディレクター、Mark Morley氏
従来は取れなかったような大量のデータを無数のセンサが取得し、インメモリ技術が従来は難しいとされた分析を可能にするなど、情報システムは新たな局面に差し掛かっているとも言われる。
特に、産業の中核である製造業に焦点を当てた時、IoTはサプライチェーンをどのように変えるのか。
IoTを利用した今後のサプライチェーンシステムを提供する米OpenTextで、製造、自動車業界を担当するディレクター、Mark Morley氏に話を聞いた。
在庫が切れる前にコーヒーカプセルを補充
Morley氏はサプライチェーンの変化を表すキーワードとして、「可視化(Visibility)の広がり」「プロアクティブな補充」「予測ベースのメンテナンス」の3つを挙げる。
Visibilityの一例がConnected Carだ。自動車の部品につけられたセンサから、走行中の燃費情報を取得。設定よりも燃費効率が落ちた場合などに、その場でスマートフォンやスマートウォッチなどにアラートを出すといった使い方ができる。
また、プロアクティブな補充の例として、1杯単位で飲むカプセル式のコーヒーメーカーのシナリオに触れた。消費者の自宅などにあるコーヒーメーカー側に設置したセンサにより、コーヒーカプセルの在庫数を把握。
最適な補充数を分析ソフトウェアが割り出し、それに従い、コーヒーカプセルの在庫が切れる前にサードパーティーロジスティクス(3PL)を経由して補充するというものだ。
コーヒーカプセルの在庫が切れる前に3PL経由で補充するシナリオ
予測ベースのメンテナンスのケースとして、自動車部品の水圧計につけたセンサが、水圧の異常を検知。その情報が自動的に自動車メーカーやディーラーに届けられ、メーカーが所有者に修理や部品交換を提案するという使い方を紹介した。
早まるトランザクションの起点
「IoTのような新たな技術が“第4次産業革命”をもたらす」と話すMorley氏。センサをベースに構築する新たなサプライチェーンシステムにおいて、従来と根本的に違ってきそうなのは、トランザクションの起点が「まだ人は認識していないが、既に起こっている未来」になることだと言える。
従来は、コーヒーカプセルの補充担当者が気づいた時点が最短の起点だった。自動車の修理に関しては、多くのケースで故障が先に起き、そこが起点となってようやく修理のプロセスが開始するため、場合によってはここに、生命にかかわるリスクも存在する。
このように、サプライチェーンの起点が、従来よりも時間軸において前に移ろうとしている。ただし、それを支える技術はセンサだけではない。センサから集めたデータを分析する技術も進歩している。
設備の潜在的欠陥の発見や、アプリやサービスの実際の消費量を自動計測してすばやく状況を把握するなど、より早い段階で、サプライチェーンのトランザクションが開始するようになると考えられる。
「ドローン船」が物流を変えるか
OpenTextは1月、分析ソフトウェアとして知られるActuateを買収した。もともと持っていた企業情報管理(EIM)に加え、2014年1月に傘下に収めた企業向けEDIを提供するGXSのソフトウェア、Actuateの分析ソフトウェアを組み合わせたサービスを展開していく。
Morley氏はそのほか、物流が変化する可能性として、「ドローン」のように運用される貨物輸送船や金属を素材にできる3Dプリンタなどにも触れた。
もし、最小限の人員で、従来の数倍、数十倍という貨物を運べるようになるとすると、物流面で従来のボトルネックが解消する可能性も出てくる。こうした技術も、製造業のサプライチェーンの在り方を大きく変える可能性を秘めている。
人が乗っているのは最前列の船のみで、残りは自動運転だという