本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、シスコシステムズの鈴木みゆき 代表執行役員社長と、日本IBMの波多野敦 ストレージセールス事業部長の発言を紹介する。
「これまでユーザー目線で感じてきたシスコの強みをさらに生かしていきたい」 (シスコシステムズ 鈴木みゆき 代表執行役員社長)
シスコシステムズの鈴木みゆき 代表執行役員社長
シスコシステムズが先ごろ、代表執行役員社長に鈴木みゆき氏が就任したことを発表した。鈴木氏の冒頭の発言は、その発表会見で、社長就任にあたって述べた抱負から抜粋したものである。
鈴木氏は1960年8月生まれで東京都出身。直近では、格安航空会社(LCC)であるジェットスタージャパンの社長兼最高経営責任者(CEO)を務めていた。それ以前は、KVHの社長兼CEO、日本テレコム(現ソフトバンクモバイル)の専務執行役員、ロイターの東南アジア地域統括責任者など、通信・ITサービス関連企業の経営に携わってきた。直近の航空会社を除くキャリアは、まさしくシスコのユーザーとしての立場である。
会見の詳細な内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは筆者が印象に残った「ユーザー目線で見たシスコ」に関する鈴木氏の発言に注目したい。
鈴木氏とともに会見に臨んだ米Cisco Systemsアジア太平洋日本(APJ)プレジデントのIrving Tan氏も、日本法人社長に鈴木氏を起用した理由の1つとして挙げた「シスコのユーザー経験」。鈴木氏はユーザー目線で感じてきたシスコの強みについて、「製品やサービスの品質の高さや迅速なサポート対応を求めるユーザーに対し、シスコは常に真摯に応え、ユーザーの立場で中長期の前向きな提案を行ってくれたという印象がある。これからシスコ側に立つ私も、多くのお客様にそういう印象を持っていただけるように努めたい」と語った。
一方、ユーザー目線で見たシスコの課題については、「グローバルな展開力を生かしながらも、それぞれのローカル市場に求められる製品やサービスをどのように生み出して提供していくか。これからは私自身も、日本市場でそうした役割を積極的に担っていく必要があると肝に銘じている」と述べた。
外資系日本法人を含めて国内市場で影響力のある大手ITベンダーの経営トップに女性が就任したのは、筆者の記憶では初めてだ。企業として多様性が求められるようになってきた中で、今回のシスコの人事はそうした動きを象徴するものになりそうだ。ただ、米国では、IBM、HP、Oracle、Yahooといった名だたるITベンダーのCEOに女性が就いており、経営手腕を発揮している。その意味では、日本企業の多様性の進展はまだまだこれからだ。