情報通信技術の新たな使い方

情報通信技術が発達すると「アービトラージ」が進む

菊地泰敏(ローランド・ベルガー) 2015年06月09日 07時30分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 第5回となった今回は、情報通信技術が発達すると、アービトラージが進むということについて紹介する。

 アービトラージ。日本語では、裁定取引、あるいはもっとくだけた表現では鞘取り(さやとり)と呼ばれている。平たく言えば、安いものを買ってきて高く売れば、その価格差で利益が出るということだ。

 このアービトラージが成立する条件にはいくつかあるが、例として2つ挙げてみよう。

 1つは、複数の市場で取引されている同一のモノの取引価格について、その両方の取引価格を知っているのは自分だけであるという場合である。

 ある特定の市場Xでxという価格で売られているモノが、別の市場Yではyという価格で売られており、その情報を知っているのが自分だけであれば、安い価格で仕入れ(例えば、x<yであれば、X市場において価格xで仕入れ)、高い価格で売却すれば(Y市場で、価格yで売却すれば)利益が出る(y-xが売却益)。

 もう1つは、価格変動が大きなモノの取引において、いち早く価格情報を入手できる(かつ、すばやく売買を成立させうる)という場合である。

 1つ目の場合、自分だけが情報を入手しているということが大事であり、2つ目の場合、情報入手とその情報の利用において、他者に先駆けることが肝要である。

 いずれにせよ、いわゆる情報戦ということであり、ありとあらゆる手を尽くし、他者の知りえない情報をいち早く入手することが成功への道である。

 例えば、株式市場を考えてみれば、いずれも理解していただけるものと思う。世界中に張り巡らされた情報ネットワークを基に、あらゆる投資家が情報戦を繰り広げている。

 情報戦において、コンピュータの高性能化により扱えるデータが大量化したことはもちろん重要であるが、ネットワークの高速化も同様に重要な役割を果たしている。

 この「ネットワークの高速化」には2つの意味が内包されている。単位時間当たりに伝送できるデータ量が増えた(例えば100Mbpsの世界から1Gbpsの世界になった)ということと、海底ケーブルの普及により地球上どこにでも遅延の少ないネットワークが張り巡らされたことである。

 これにより、デイトレードでアービトラージを狙う個人投資家も存在している。また、法人(プロ)の投資家においては、ハイフリクェンシートレーディング(HFT)と呼ぶ大型コンピュータを用いた自動売買システムで、アービトラージを狙っている。このようなプロの投資家の場合、ネットワークも高速かつ低遅延であることが命なので、海底ケーブルのルートや、その海底ケーブルの陸揚げ局までのルートも指定することが多い。

 このように、アービトラージは情報戦であり、情報戦のためにはICT技術の発展は欠かせないのである。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

連載

CIO
月刊 Windows 10移行の心・技・体
ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
セキュリティインシデント対応の現場
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft Inspire
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]