デジタルイノベーションにどのように関わるか
一時代前は、軍事・産業・学術分野で開発された高度な科学技術やその応用技術が、一般企業のビジネス分野へ、そして消費者へと転用されていきました。しかし現在は、こうした流れに逆流現象が生じており、コンシューマー技術が企業や軍事分野への転用されるようになっています。
昨今では、スマートモバイルデバイス、パブリッククラウド、ソーシャルテクノロジなどコンシューマーITの世界で発生し普及した技術を、どのように企業ITに取り込んでいくかが重要な議論となっており、この傾向は今後さらに加速すると予想されます。このようにデジタル技術やデジタル化された情報を活用することで、企業がビジネスや業務を変革し、これまで実現できなかった新たな価値を創出することをデジタルイノベーションと呼んでいます。
これまでの情報化(いわゆるコンピュータライゼーション)とデジタルイノベーションが大きく異なる点は、業務やビジネスに対する改善・拡張にとどまるものであるか、破壊・創造を伴う変革であるかという点です(図1)。

図1.コンピュータライゼーションとデジタルイノベーションの違い(出典:ITR)
企業は、このようなデジタルイノベーションの潮流に適応していくだけでなく、自らイノベーションを起こして、ビジネス、顧客との関わり方、働き方などを変革していくことが求められます。
そして、IT部門はデジタルイノベーションを主体的に推進するか、もしくは、事業部門が推進するイノベーションを企業内唯一のITの専門家集団として強力に支援するかのいずれかの対応が求められます。従来のコンピュータライゼーションの世界だけを守備範囲とするIT部門は、自らの規模と発言権を縮小せざるをえなくなるのではないでしょうか。
- 内山 悟志
- アイ・ティ・アール 代表取締役/プリンシパル・アナリスト
- 大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストとして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は、大手ユーザー企業のIT戦略立案のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。最近の分析レポートに「2015年に注目すべき10のIT戦略テーマ― テクノロジの大転換の先を見据えて」「会議改革はなぜ進まないのか― 効率化の追求を超えて会議そのもの意義を再考する」などがある。