税理士事務所がクラウドでマイナンバーを管理する場合
税理士がクラウドのマイナンバー管理システムを利用している場合は、事務所内のシステムで管理している場合に比べて、中小企業も税理士事務所も安全管理措置面での負荷を軽減することができます。
クラウドのマイナンバー管理システムでは、マイナンバーの収集で従業員が本人および扶養親族のマイナンバーを入力・登録し、本人確認書類も画像データとしてアップロードすることができるようになっています。
PCだけでなくスマートフォンでの入力も可能であり、従業員が自宅でマイナンバーをスマートフォン経由で入力し、本人確認画像をアップロードすれば、それらのデータはそのままクラウドのマイナンバー管理システムに登録さてます。アクセスが許可された中小企業の担当者や税理士事務所と共有できるため、中小企業の担当者はPCの画面上で本人確認することができます。
また、税理士事務所も自ら入力する手間もなく、従業員などの入力状況をPCで確認し、収集の進捗を管理することができます。この仕組みで収集、本人確認まで可能なら、従業員から中小企業、中小企業から税理士事務所へマイナンバーを受け渡す際のリスクもありません。
また、マイナンバーの保管もクラウド上のデータベースに保管されますので、税理士事務所ではマイナンバーを事務所内に「持たずに管理」することができ、システムに対する安全管理措置への負荷も軽減されます。
そして、この仕組みであれば、中小企業もマイナンバーを「持たずに管理」できるため、安心して本業に専念できます。委託先である税理士事務所への監督については、マイナンバーがどのように運用されているか、適宜報告を受けることで監督の責務を果たすことができますので、中小企業にとって負担の少ないマイナンバー対応が実現できます。
税理士への委託--利用・提出シーンでのメリット
年末調整業務を税理士に委託し、マイナンバーの取り扱いを委託する場合は、源泉徴収票など法定調書および給与支払報告書などの作成、提出も税理士事務所に委託することになります。税理士は多くの中小企業に委託されて、従来からこれらの作成業務をシステムで行い、提出も電子申告・申請で中小企業に代わって代理送信を行ってきました。
税理士に年末調整業務でマイナンバーの取り扱いを委託する場合、マイナンバーがシステムで管理された状態でマイナンバーの記載が義務づけられた書類が作成され、提出もそのまま電子で行えることで、書面でのマイナンバーの利用や提出による漏えいなどのリスクを軽減することができます。
この点は、税理士に委託する場合のメリットといえます。ただし、税理士が電子申告・申請に対応していない場合は、この限りではありませんので、委託先の税理士が電子申告・申請に対応しているかは確認しておきたいチェックポイントとなります。
以上では、税理士への委託にしぼって課題をみてきましたが、社会保険関連の業務でマイナンバーの取り扱いを社会保険労務士に委託する場合も、基本的には社会保険労務士が利用するシステムにより中小企業の負担もかわってくる点は同じことになります。
もともと年末調整業務を税理士に委託していない中小企業では、外部の民間業者へ委託がもう1つの選択肢となります。次回は、この外部の民間業者への委託について解説するとともに、ここまでみてきた内部での対応や外部委託について、それぞれの中小企業の実情にあったマイナンバー対応の選択肢のチェックポイントを整理します。
- 中尾健一 アカウンティング・サース・ジャパン 取締役マイナンバーエバンジェリスト 1982年日本デジタル研究所 (JDL) 入社。日本の会計事務所のコンピュータ化を30年以上にわたりソフトウェア企画面から支えてきた。2009年、税理士のためのクラウド税務・会計・給与システムを企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。マイナンバーエバンジェリストとして、主にマイナンバー制度が中小企業に与える影響や具体的対応策に関して解説する。