データもIT部門が用意したものは分析に適しません。ERP(統合基幹業務システム)にデータをいれるために作られており、製品ジャンルの名称が販売チャネルによって異なっていることなど、分析での利用が念頭に置かれていません。生産管理や在庫管理、販売管理が目的で、分析のためのデータではないわけです。マーケターが分析することを前提としていない。
マーケターには、分析することが前提の「名寄せがしてある」データセットが必要であり、この点はIT部門の協力が必要なのです。「攻めのIT」といいますが、情シスはどうしたら売り上げに貢献できるか、KPI(主要評価指標)などのイメージがわかないと思います。以前、9000億円の売り上げがある食品会社の情報システム部とマーケティング部の方たちに商品説明をしたときにも、この2つの部は連携が取れていませんでした。
SIer(システムインテグレーター)も、CIOよりもCMO向けのツールを欲しがり、事業部門と話をするようになってきています。マーケティング部が欲しいツールを情シス部門が理解しておらず、予算が移動してきたからです。

分析ツールを利用したイメージ
――実際に企業のデータを管理して持ってるのは情シスだ。マーケティングと情シスが手を組むにはどうすればいいか。
共通の言語を持つことです。SIerが両者の間に入って手伝うことも解決策の一つと考えます。例えばマーケターが「顧客マスターが見たい」といっても、DBはERPにもCRMにもありますし、コールセンターやウェブにもあります。ひとつの会社に顧客マスターが5つも6つもある、社員マスターも同様です。給与のマスターだけでなく、データ入力のサブシステムにもマスターがありますし、メールや入退室管理もそうです。バラバラに管理されている。
マーケターが担当営業のマスターを欲しいというときに、情シスは「どのマスターのことだ」という話になります。もちろん、業務管理としてはバラバラにしておくべきなのですが、たとえば情シス部門がマーケティング部門にERPの顧客マスターを渡したとします。そうすると、ウェブのログが紐付いておらず、マーケターの望んだ、ユーザーの遷移がわかるようなデータを得るには外注が必要なことも多く、「情シス部門は(データ分析ができず)頼れない」と言われてしまいます。この両者が互いを理解すること、両者の懸け橋となる言語、役割が必要なのです。
いまのところ、高度なデータ分析も必要ではないものの、データサイエンティストの数は米国で2万6000人、中国で1万7000人、日本で3400人ほどと、ニーズに全く足りていません。そのため、営業部長など、実際の業務を知ってる人が簡単な分析ができるようになることが必要です。
Amazon Web ServicesがBIツールを月額9ドルで提供すると発表しました。これはデータ分析の民主化の流れです。私はよくBIツールを自転車に例えるのですが、BIを使いこなすにはスキルが必要です。自転車屋さんは自転車の乗り方までは教えてくれません。われわれのツールを補助輪としてつかっていただき、データ分析に携わる人の一助になりたく考えています。
――今後のビジョンは。
ITの基本構成要素は、ハードウェアとソフトウェア、ネットワークですが、ハードとネットワークの単価は安くなる一方、ソフトにはどんどん価値が出てきていると認識しています。そのときにデータを確保していれば、仕事がなくなることはありません。特にデータのクレンジングは重要です。米国ではデータマネジメントを重要に捉えていて、投資もされています。
これからはモノのインターネット(IoT)も本格的になります。センサから集めたデータを何に使うのかがわかっていないと、データの流し込み方は制御できません。
われわれはDataDiverでBIツールと業務を結ぶツールを展開しました。次は、データと業務、データと分析、分析作業と社内ITをつなぐということ目指しそのような製品を提供していきたいと考えています。