日立製作所と日立産機システム、日立産業制御ソリューションズの3社は11月16日、IoT(Internet of Things)やグローバル展開に対応するため、オープン化、高性能化、シンプル化を実現した次世代型の産業用コントローラを共同で開発したと発表した。
この次世代型産業用コントローラのミドルレンジ機「HXシリーズ」を日立産機から、ハイエンド機「HF-W/IoTシリーズ」を日立産業制御からそれぞれ製品化し、2016年4月より順次販売開始する。主に、包装機械、搬送機械、工作機械、半導体・液晶製造装置、計装など幅広い産業分野向けに拡販していくという。
「HXシリーズ」装置外観(イメージ)(日立提供)
「HF-W/IoTシリーズ」装置外観(イメージ)(日立提供)
近年、製造業においては、サプライチェーンのグローバル化に加え、IoTを活用したモノづくりやサービスの革新が求められている。
こうした中、工場内のさまざまな設備機器の制御を担うPLC(Programmable Logic Controller)や、設備機器のデータの収集およびサーバなどの上位情報システムとの通信を担うIPC(産業用コンピュータ)を中核としたオートメーションシステムにおいては、設備機器を制御するだけでなく、設備機器の情報をクラウドまでシームレスに伝え、その情報を分析することによって、工場全体やサプライチェーン全体を最適化する取り組みが実施されている。
しかし従来は、メーカーごとに異なる独自プログラミング言語のPLCと固有ネットワークを組み合せたオートメーションシステムを構築しているため、IoT対応においては設備機器との通信の親和性の確保が、グローバル展開においてはノウハウを持つ技術者の確保が課題になっていた。こうした課題に対応するため、日立グループでは、IoTやグローバル展開に対応する次世代型産業用コントローラを開発、製品化する。
今回開発した産業用コントローラの特徴は以下の通り。
オープン化
国際標準であるIEC61131-3規格(PLC用の5種類のプログラミング言語を定義)に準拠するプログラミング言語を採用することで、グローバルでのプログラミング技術者の確保を容易にし、グローバル生産体制の構築を支援する。また、産業用オープンネットワークであるEtherCATを採用することで、近年急速に普及が進んでいるEtherCAT対応の多くの設備機器につながり、データをシームレスにクラウドまで伝送できる環境を提供する。
高性能化
近年の処理速度が高速化しているCPUの性能を生かし、ソフトウェアPLCであるCODESYSを搭載することにより、1つのCPUで、決められた順序に従って制御するシーケンス制御と、センサと同期させた高度なモーション制御を同時に実行できる。
シンプル化
PLCとIPCとの機能を併せ持つPAC(Programmable Automation Controller)として、次世代型産業用コントローラを開発。これにより、従来に比べて導入、開発、メンテナンスコストの削減と省スペース化が図れる。
この次世代型産業用コントローラの導入により、顧客企業のオートメーションシステムのオープン化を支援するとともに、コストの削減と技術者の負担軽減を図ることで、IoT対応やグローバル展開を容易にしていく。
日立では、5月1日付でインダストリアルプロダクツ社を設立するなど産業機器事業のグローバル競争力を強化するとともに、オープンイノベーションを通じて、IoT分野における事業拡大に注力している。
今回販売を開始する産業用コントローラは、こうした方針に基づき開発、製品化するもので、日立と日立産機、日立産業制御では同製品の拡販を通じて、世界の産業の発展に貢献するとしている。