インテルは9月29日、“モノのインターネット(Internet of Things:IoT)”に対する同社の考え方や製品、パートナーシップに関する記者向けの説明会を開催した。19兆ドルとも言われるIoT市場はビジネスの変革を推進するためのチャンスであり、「エッジ端末からクラウドにいたるまで、CPUからソフトウェアにいたるまでエンドトゥエンドで提供していく」ことを強調した。国内パートナーとしてオムロンと三菱電機の担当者が同席した。
“1%のパワー”を指標
米Intelのセールス&マーケティング事業本部バイスプレジデント兼エンベデッドセールスグループ ゼネラルマネージャーのRick Dwyer氏は、IoTについて19兆ドルとも言われる市場規模が予測されており、さまざまな分野で新たなビジネスのチャンスが生まれる中でどのように取り組んでいるのかを解説。市場やビジネス創出については、IoTをビジネスに組み込むことで、業績の改善につながるケースをいくつか紹介した。
米Intel セールス&マーケティング事業本部バイスプレジデント兼エンベデッドセールスグループ ゼネラルマネージャー Rick Dwyer氏
「ビジネスへの貢献度を測るために“1%のパワー”を指標にしている。たとえば、航空業界では1%の燃料を削減すれば300億ドルの効果がある。医療業界では1%のシステム効率の改善で630億ドルの効果がある。IoTデバイスからデータを収集し、分析して、フィードバックし、プロセスの改善などにつなげることで、こうした効果が得られる」(Dwyer氏)
こうした価値を創出するためには、全体としてシステムがいくつかの条件を満たすことがポイントとなる。まずは、「基盤としてのセキュリティ」が確保されていること。ハードウェアやソフトウェア双方について「絶対に不可欠な要素」(同氏)だという。
次は「発見とプロビジョニング」。これは、デバイスが情報を簡単に見つけられるようにし、その情報をリアルタイムでシームレスにクラウドなどの基盤につなぐ仕組みだ。「簡単にできるようにしなければ、デバイスとして使われなくなる」(同氏)
3つめとして、データを適切に共有するための「データの正規化」、4つめに、正規化したデータを使う「実践的な分析」、5つめに、ビジネスとして価値を出すための「ハードウェア、ソフトウェア、データ管理の収益化」がある。
その上でDwyer氏は「インテルは、これらのポイントを投資分野にしている。投資のカテゴリとしては大きく、ハードウェア性能、相互運用性、セキュリティ、分析の4つ。具体的には、組み込みLinuxを提供するWind River、セキュリティ製品を提供するIntel Security(McAfee)、API管理のMasheryやAeponaなどの買収した技術を使って実現する。デバイスからクラウドにいたるまで、IoTのすべてのポイントで提供できることが強みだ」(同氏)と強調した。
製品としては、IoT向けゲートウェイがある。QuarkやAtomなといった消費電力の小さいCPUにLinuxやセキュリティといったソフトウェア機能を“システムオンチップ(SoC)”として統合し、簡略化したライセンスモデルでオープンなプラットフォームとして利用できるようにした。
事例としては、トラックの輸送管理システムを開発するVnomicsが、トラックのエンジンやブレーキなどのデータを収集してメンテナンス時期を予測するケースを紹介した。ユニークなのは、故障予測だけでなく、ドライバーの研修にも活用していることだという。SAIAという分析ツールの企業と協力して、ギアシフトを効率的に行い、1年間で150万ドルの燃費節約を実現したという。「IoTでエンドの情報がドライバーというエンドにフィードバックされ、ビジネス価値を生んだ素晴らしい事例だ」
インテル 常務執行役員 事業開発本部長 平野浩介氏
インテル 常務執行役員 事業開発本部長の平野浩介氏は国内での取り組みや製品展開について、「エンドトゥエンドというのは、データが生成される場所とデータを分析してサービスとして提供される場所をつなぐこと。一連のループを閉じることが重要だ。その意味では、IoTというのは、サービスの提供に尽きる。われわれは、そこでいかに付加価値を付けていくかが重要なポイントだと考えている」とした。
エッジデバイス向けの製品としては、9月9日にIDF(Intel Developers Forum)で発表されたIoT向けSoC「Intel Edison」を10月以降に発売する予定。Edisonは、500MHzのデュアルコアCPU搭載SoCで、Wi-fiとBluetoothを内蔵する。低コストで容易に商品化が可能なIoT向けプラットフォーム製品の第1弾となる。