Salesforce.comは米国時間1月5~7日にかけてサンフランシスコで開催した「Analyst Summit」で、「Wave Analytics Cloud」の改良と、IoT戦略の進捗状況、「Salesforce Thunder」に焦点を当てていた。
SalesforceはWave Analytics Cloudの再始動に成功した。また同社は、Salesforce ThunderとIoT戦略の準備を進めるなか、過去のWaveではまった落とし穴を避けようとしているようだ。
本記事では、Analyst Summitで発表された2つの重要なポイントと、それに対する筆者の見解を解説する。同イベントで、Salesforceの幹部らは同社の戦略と、2016年における製品のロードマップを語るとともに、Waveの市場投入時におけるいくつかの過ちを認めた。なお、Waveは15カ月前に「Dreamforce 2014」で発表された製品だ。
Waveが最初に市場投入された際の評価は概ね、高価すぎる、大企業に焦点を合わせすぎている、昔からあるBIプラットフォームに製品体系があまりにも似すぎているというものだった。同イベントで幹部らは、パートナーや顧客が求め、必要としているのは究極的に、垂直業界に特化したカスタムアプリをビルドする方法であるため、(あらかじめ作り込まれたアプリではなく)プラットフォームを起点にすることは必須だったと主張していた。しかし、市場は第1世代の製品の価格と製品体系の複雑さに二の足を踏んだのだ。
2015年9月に開催された「Dreamforce 2015」では、大幅に簡素化された第2世代となるWaveが発表された。まず、同社は「Builder」と「Explorer」という2つのライセンス(それぞれ250ドル/ユーザー/月と125ドル/ユーザー/月)を廃止し、150ドル/ユーザー/月の「Wave Analytics Platform」ライセンスのみとした。また同社は「Wave Analytics App」の第1弾として営業管理に特化した「Sales Wave Analytics App」も75ドル/ユーザー/月という価格で市場に投入した。Wave Analytics Appは、ユーザーやタスクに特化したデータフローとダッシュボードとともに、分析内容やアクションをカスタマイズできるテンプレートを備えており、迅速かつシンプルな配備を念頭に置いて設計されている。
例えばSales Wave Analytics Appのテンプレートを使うことで、売上の水準や、チームのパフォーマンス、パイプラインの健全さを簡単に分析できるようになる。あらかじめ作り込まれている実績データの分析機能では、四半期毎の販売実績や、営業担当の対前年比業績、販売サイクルの長さといった評価が可能となっている。また管理者は、予測のリセットや契約の優先順位付けといった、推奨アクションを起動するためのトリガーを設定できる。
「Analytics Cloud」を担当する最高執行責任者(COO)Stephanie Buscemi氏は、2016年におけるWave製品のロードマップの紹介で、以前に発表していた「Service Wave Analytics App」は4月に提供を開始するが、「Marketing Wave Analytics App」はまだ開発段階だと述べた。また、プラットフォームに関して同氏は、データコネクタフレームワークとともに、スケジュール機能と、セルフサービス型のSalesforceデータの準備オプションを開発中であるとも述べた。
Waveに関する筆者の見解
筆者は、SalesforceがようやくWaveの製品体系や価格に焦点を当てるようになったとともに、Buscemi氏が「Salesforce向けのアナリティクスとして最高のオプション」と呼ぶ同製品に対する明確かつ厳密な取り組みを始めるようになったと確信している。Waveのユーザーインターフェースやモバイル向けのネイティブアプリといった従来からある魅力のいくつかは、いまだに際立っている。そして、Waveアプリとしてあらかじめ作り込まれている機能の魅力について筆者が(Salesforceおよび顧客の双方から)耳にしている評価から判断すると、Waveの再始動は成功すると期待してよいだろう。