――セルフサービスBIが注目されている。その背景には何があるのか。
米国では数年前からセルフサービスBIが認知され始めています。その要因の1つとして、データ活用に対する意識の高さがあります。聞いたところによると、最近の米国企業の新入社員は、Excelと同じようにBIツールを使いこなせる人が多いようです。
多くの企業では、情報活用の専任部署「ビジネスインテリジェンスコンピテンシーセンター(BICC)」を設置し、経営層向けのダッシュボードやレポートを作成してきました。しかし、BICCに相談しても要件が正しく伝わらない、対応に時間が掛かりすぎるなどの問題が起こり、それだったら自分たちで使えるツールがほしいというニーズが高まりました。
「セルフサービス」と「データディスカバリ」は混同される場合がありますが、明らかに違います。セルフサービスはエンドユーザー自身がダッシュボードやレポートを作成することをいい、データディスカバリはそれに加え何かを発見したいという目的が非常に強いのです。
つまり、ダッシュボードは身体の状態を数値化してチェックする“健康診断”で、データディスカバリは健康診断などで発見された異常を詳しく調べる“精密検査”のようなものなのです。「何が起こったか、何が起きているか」をダッシュボードで確認し、「なぜ起こったか、何が起こるのか」をディスカバリで分析していくのです。
ダッシュボードやレポートをセルフサービスで容易に作れるというのでは従来型のBIと変わりありません。ディスカバリまで浸透している国内企業はまだ多くありませんが、次の段階に進みつつあります。
――MicroStrategyではどのようなアプローチを取っているのか。
われわれはBI専業ベンダーとして、特に米国や欧州の大企業を相手に揉まれてきました。日本でも8割が大企業です。基本的には大規模環境を前提にしているので、これまではどうすればパフォーマンスを上げられるのか、データガバナンスを効かせられるのかといったことに重きを置いていました。
しかし、昨今のセルフサービスBIの流れを受け、3年ほど前から製品開発のやり方を見直しました。使いやすさに徹底的にこだわりつつも、これまでの機能を損なうことがないように開発したのが、2015年7月に出荷開始した「MicroStrategy 10」です。バージョン9から6年ぶりのメジャーリリースです。
MicroStrategyは、従来型のBIとデータディスカバリを包括的かつシングルアーキテクチャで提供し、相互をシームレスに行ったり来たりできます。これまで別物として考えられていた両者が結びついていくでしょう。これを全く違ったプラットフォームにしてしまうと、部門や機能ごとに互換性のないツールが大量発生してしまいます。
1つのアーキテクチャの中で自由にデータを分析したり、レポートを作成したりできるようになると、誰かに頼むよりも自らの手で作業するセルフサービスが当たり前になります。
使いやすく、正しい分析結果を導き出すためには、データ加工が必要です。セルフサービスBIでは、このデータ加工に80%の時間がかかっているという報告もあります。ビジュアライズの部分だけでなく、分析が可能なデータへの加工や編集の部分でもセルフサービスである必要があるのです。