伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、村田製作所、NTTデータ先端技術の3社は3月7日、データセンターやハードウェアなどの設備仕様のオープン化を推進するOpen Compute Project(OCP)の仕様に準拠した専用ラックシステムを共同で開発すると発表した。
NTTデータ先端技術が持つ集中電源方式の技術に基づき、村田製作所が電源ユニットの設計、製造を担当。CTCが日本国内ユーザーの要望を取り入れた専用ラックシステムの仕様を策定し、ラックメーカー数社がラックを製造する。
パワーシェルフと電源装置については、サンプルの提供を8月、製品販売を2017年3月に計画。多目的バッテリーモジュールについては、2017年3月の製品販売を目指して開発を進めており、その他のモジュールについても順次開発、販売を進めている。
今回開発されるOCPラックのイメージ図(CTC提供)
OCPは、米Facebookが自社サービスで使用しているデータセンターやサーバなどのハードウェア仕様をオープン化するため2011年に開始したプロジェクト。全世界で150社以上が加盟し、OCP仕様のサーバ、ストレージ、スイッチ、ラックなどの開発を進めている。
このうち、OCP専用ラックシステムは、集中電源にてAC-DCを一括変換することで電力効率を向上させ、バスバー経由で各サーバ、ストレージ、ネットワーク機器に電源を供給する専用のラックシステム。送電方式や電圧は国や地域によりさまざまで、米国では3相4線200Vまたは480Vが使用されることが多く、この方式に対応したOCP専用ラックが使用されている。
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一方、日本では単相100Vまたは200V、3相3線200Vが使用されることが多く、米国仕様のラックを導入することが容易ではない上、コストについても一般的なラックよりも高額となる。
日本国内のデータセンターでOCP仕様のハードウェアを使用するためには、電源とラックサイズ、コストの課題を解決し、耐震性能を考慮した設計を専用ラックシステムに導入することが求められている。
今回開発するOCP専用ラックは、3相4線方式はもちろん、3相3線方式や単相方式、さらに、高効率が期待されるHVDC(高電圧直流給電)方式の選択も可能とし、従来から使用されているサーバルームへの導入が容易になる。
ラックの高さや奥行きも日本国内で標準的に使用されているサイズに設計する予定で、価格も米国で販売されているOCP専用ラックの7割程度を検討している。
今回の共同開発における、3社それぞれの具体的な役割は以下の通り。
CTC
CTCは2014年1月に国内で初めて、OCPの運営団体であるOpen Compute Project FoundationからSolution Provider認定を受け、OCPが正式に認定する製品の販売、設計、構築、保守サポートを開始するとともに、OCPの普及に貢献してきた。OCP仕様のハードウェアを利用して、OpenStackをはじめとしたオープンかつスタンダードな技術を組み合わせた次世代ITインフラ「Open Cloud Package」の提供も2015年から行っている。
今回のOCP専用ラックシステム開発に際しては、ユーザーへの提案、導入実績から得られた経験に基づき、日本国内のデータセンターで必要とされるラックの仕様を策定した。ユーザーへの専用ラックの販売、構築、保守サポートに加えて、従来から提供しているOCP仕様のサーバ、ストレージ、ネットワーク機器などを専用ラックシステムと組み合わせることでOCPを活用したトータルソリューションを提供していく。
村田製作所
村田製作所では、19インチ標準ラックに実装して使用するデータセンター向け集中電源製品の開発、製造、販売を以前から実施してきたほか、ハイパワータイプのリチウムイオンバッテリの開発も進めている。また近年、業界での関心が高まっているOCPにも参画し、当該プロジェクトへの貢献可能性について検討を進めてきた。
今回のOCP専用ラックの開発に関しては、村田製作所がこれまで蓄積してきた集中電源技術とリチウムウイオンバッテリ関連技術、CTCとNTTデータ先端技術の技術を組み合わせる。これにより、高効率で高品質な電源ユニットとリチウムイオンバッテリを含むパワーシェルフの開発、製造、販売を行うとしている。
高効率の電源ユニットを用いた集中電源方式や高品質の内製リチウムイオンバッテリなどにより、高効率で信頼性の高いOCP仕様に準拠したパワーシェルフを提供、データセンター事業者の運用コスト低減に貢献する。
NTTデータ先端技術
NTTデータ先端技術では、個々のIT機器から電源を取り除く。サーバラック全体の必要電力に応じた電源を集めることで、サーバラックとして5~10%の高効率化を図る集中電源方式を、サーバラックシステムの省エネ対策として展開。また、集中電源の台数を最適制御することとバッテリを利用したIT機器のピーク対応を図る技術で特許を持つ。
今回の共同開発においては、これらの技術を使って、19インチラック、OCP専用ラック などに対応したシステムを販売していく。また、集中電源の入力電圧をHVDC(高電圧直流給電)対応にすることによって、従来のUPSシステムに対して、省エネ、高信頼性、安全性に優れたシステムをデータセンター中心に提供するとしている。