FinTechが持つ意味合いとは : 金融機関主導による金融イノベーションの必要性
前章で述べたFinTechのインパクトを示す3つのレベルは、金融機関にとってどの様な意味を持つであろうか。最もシンプルなのは、「(3)エンハンス」である。新たなテクノロジの活用により金融機関のビジネスおよび業務の側面で自由度と効率が飛躍的に向上する。従って、自社ビジネスへの適合性や効果をいち早く見極め、同業他社に比べ、いかに迅速に活用できるかが重要となる。
一方で「(1)アンバンドル」「(2)リバンドル」は、金融機関にとって直接的な脅威となる可能性を持つ存在である。特にリバンドルに関して言えば、非金融企業が自社のサービスと金融サービスを組み合わせ、全く新しい顧客体験を提供しており、金融機関と横並びで比較されることすらなくなる可能性がある。換言すれば、「銀行」といった垂直統合型ビジネス自体を否定し、業際を再定義することで市場自体の形を変えていくほどのインパクトを持つ。
それでは、金融機関はこれを座して待つのみであろうか。答えはもちろん「否」である。FinTech企業との競争だけでなく協業も含めて、金融機関こそが自ら既往ビジネスをある意味否定しつつ、新たな形態の業容に転換していく必要があろう。
次回は、「(1)アンバンドル」「(2)リバンドル」のインパクトを詳細に述べたうえで、金融機関が取るべきアクションについて考察したい。
- 村上 隆文
- アクセンチュア株式会社 戦略コンサルティング本部エンタープライズアーキテクチャ&アプリケーション戦略 マネジング・ディレクター。
- 金融機関向けにIT・テクノロジー戦略を担当。10年以上に渡り、金融業界におけるIT戦略、ITトランスフォメーション、PMI等のプロジェクトに従事。テクノロジー戦略、イノベーション戦略、IT投資戦略、ビジネス・ITトランスフォメーション、大規模システム導入等に多くの知見を持つ。経済産業省「産業・金融IT融合に関する研究会」(FinTech研究会)メンバー。