これまでファナックにはあまりオープンなイメージがなかったが、新システムは図のような仕組みになっているため、オープンプラットフォームとしてむしろパートナーエコシステムを積極的に広げていく考えだ。そこで筆者は会見の質疑応答で、「新システムは製造業向けIoT基盤のデファクトスタンダードになり得るか」と聞いてみた。その回答が冒頭の発言である。
オープンプラットフォームとしてのFIELD system
稲葉氏によると、ファナックがこれまで世界の製造業者に収めたCNCやロボットコントローラは350万台以上に及ぶという。例えば、これらをつなげるだけでも相当なインパクトになる。果たして思惑通り展開できるか。今後の動向を大いに注目しておきたい。
「メインフレームは10年後も相当数、使われ続けている」 (NEC 森茂雄 シニアエキスパート)
NECの森茂雄 シニアエキスパート
NECが先ごろ、業務システム構築基盤ソフトウェア「SystemDirector Enterprise」の新製品として、ソースコードなどからシステム内の資産を可視化して業務アプリケーション保守の効率化を支援する「SystemDirector Enterprise Asset Innovation Suite」と、設計書から帳票フォームとテスト用帳票データを自動生成して帳票開発の効率化を実現する「SystemDirector Enterprise for Report」の2種類を提供開始すると発表した。
同社クラウドプラットフォーム事業部シニアエキスパートである森氏の冒頭の発言はその発表会見で、とくにSystemDirector Enterprise Asset Innovation Suiteにおいてメインフレーム「ACOS-4」の既存ユーザーを対象としていることから、それに関連して筆者の質問に応じて今後のメインフレーム利用の動向について語ったものである。
SystemDirector Enterprise Asset Innovation Suiteは、開発・保守要員の高齢化や設計書の欠損のため、既存システムの保守や構築に多大な時間や費用が必要となっていたこれまでの課題に対し、ソースコードやシステム稼働状況などを分析し、可視化を行うツールである。
具体的には、実際に稼働している資産とそうでない資産の一覧化や、コンパイル時の資産間の引用関係(COBOLプログラムにおけるCOPY句の引用など)、実行時の資産間のアクセス関係(プログラムからデータベースへのアクセスなど)の可視化を実現。また、資産の改修時に他の資産にどの程度影響を及ぼすかを可視化したり、プログラムの複雑度を数値として可視化することもできるとしている。
森氏によると、ACOS-4ユーザーは現在約400社で、そのうち2割がこのツールを適用すると見込んでいる。こう聞くと、その2割のユーザーは、いわゆるメインフレームによる既存システムをモダナイズする方向へ動き出すように受け取れるが、「今回のツールは、資産を可視化して保守を効率化することが目的で、その先にモダナイズへ動き出すかどうかはユーザーごとの判断になる」という。
さらに同氏は個人的見解と前置きしたうえで、「ここ数年、メインフレームのユーザー数は毎年5%程度減少している感じで、今後もこの傾向は続くだろう。ただし、メインフレームは10年後も相当数のユーザーに使われ続けているのは間違いなく、ベンダーとしてはその保守を効率的に行うことが求められている」と語った。冒頭の発言はこのコメントから抜粋したものである。メインフレームの利用実態を垣間見た気がした会見だった。