--ファッションなら楽天、ゾゾタウンなど。どう戦うか、メディアがECをやる強みとは
女性誌を読むと、買いたいという気持ちが出てくると思います。最初は雑誌を見た後に1クリック、2クリックで買えるようなものを考えていました。最終的に、エル編集部の協力を得て、(楽天などとは)違う切り口でエルの世界観を持つECサイトならチャンスがあると思いました。
値段なら楽天、品ぞろえならゾゾタウンと特徴がありますが、エル・ショップは雑誌とのコラボが可能です。その上、オリジナル性が高い。必然的に単価も高いのですが、そこも大事なポイントになっています。
今からECサイトを立ち上げるのは難しいかもしれませんが、2009年というタイミングもよかったと思います。
--エル・ショップの売り上げは?
売り上げ全体の17%を占めるに至っています。ビジネスの構造を見ると、デジタル(広告、コマース、電子雑誌)が6割、紙が4割です。リーマンショック後に比率が逆転し、あっという間にデジタル中心になりました。6年連続の増収増益はデジタルへの移行がうまくいったからだと分析しています。
エル・ショップの後、「婦人画報」でもECと通販(「婦人画報のおかいもの」)を立ち上げました。こちらもお取り寄せのようなイメージで、量より質重視です。読者層を考えるとECは難しいとも思いましたが、いざやってみるとこちらも2けたで伸びています。また、紙では50~60代の女性が中心的な読者でしたが、ECでは40代も増えており、オーディエンスが広がりました。このようにいろいろとメリットが出ています。
--今年に入り米女性誌『コスモポリタン』の日本版をローンチした。オンラインのみというユニークな展開だが。デジタルコンテンツ戦略は?
デジタル戦略のスタートは1996年に立ち上げたエル・オンラインからです。オンラインサイトはどこもやっていますが、エルの違いは、雑誌とは違うチームが作ったという点です。最初から紙の雑誌は雑誌、ウェブはウェブ、と別のチームを作りました。
2015年に、コンテンツチームとして紙とウェブを一緒にしました。理由は、デジタルにコンテンツを増やしていくという狙いがあります。今後もっと拡大していきます。
コスモポリタンでは「MediaOS」を導入しました。MediaOSは弊社の英国チームが作成したコンテンツのプラットフォームで、2014年より米国のチームが導入をはじめており、2015年には欧州で導入されました。2016年はアジアで導入していきます。コスモポリタンは日本で第1号となり、今後他のメディアにも拡大します。

英国チームが作成したコンテンツのプラットフォーム「MediaOS」
MediaOSには3つのメリットがあります。
1つ目として、同じ技術を使うことでコストを抑えることができます。2つ目としてHearstグループとしてグローバルでのコンテンツ共有に力を入れており、ここを強化できます。デジタルで重要な戦略で、テキスト、動画、写真などリアルタイムでのコンテンツ共有を進めていくというものです。3つ目が分析です。グローバルでコンテンツがどのように読まれているのか、どんな人がわれわれのサイトにアクセスしているのかを分析するのにMediaOSは役立ちます。
この3つに加えて、バナー広告など広告のフォーマットが統一できるというメリットもあります。グローバルのクライアントは、米国のサイズ、日本のサイズなどと作り分ける必要がなくなり、ワンストップショッピングで広告が可能となり、グローバルレベルでのキャンペーン展開が容易になります。