デジタル化などビジネスを取り巻く環境も変わり、従来のIT基盤だけでは今のビジネス要求に耐えられなくなってきてることを前回説明しました。今回はデジタル領域のトレンドについて解説します。
なぜデジタルトレンドを理解する必要があるのか
そもそも、なぜITリーダーはデジタルトレンドをきちんと理解し、ビジネスに取り込む必要があるのでしょうか。ひとつには、新しいトレンドが起きているのには必ず理由があり、その多くは、過去の反省や改善、あるいはマーケットに求められているものによるからです。
誤解を恐れずに言えば、新しいトレンドには(トレンド足り得る)さまざまなベネフィットが多く含まれているともいえます。もちろん実展開に際しては未経験の課題も生まれるので、ベネフィットの裏には苦労をすることもあり得ます。もうひとつは、トレンドをきちんと理解しておくことで、表層的なセールストークや中長期的には足かせにもなりかねない目先の誘惑に惑わされなくなることです。
例えば、トレンドを活用して効率的な投資をするのか、あるいはトレンドではないと判断し、今必要があれば必要最低限の投資で対応するのかには、トレンドを理解した上での意思決定が不可欠になるということです。
学んだことを捨て、再学習する
私たちはいま、スピードの速さ、正確さ、新しさが求められる人類の生産性において、(デジタル化という)第一次産業革命以来の大きな転換期を経験していると言われています。この転換スピードは今後一層加速していくと考えられていますので、長期的な成功を実現するには、企業は今持っている知識を整理し、再学習する必要があります。
さて、再学習とは何でしょうか。米国の評論家であり未来学者であるAlvin Toffler氏は次のように述べています。
“21世紀における無教養とは、読み書きができないことではない。学ばない、学んだことを捨てきれない、そして再学習ができないことである。” Alvin Toffler (1928-)
また、初代ドイツ帝国宰相であったBismarckは次のように述べています。
“愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ” Otto von Bismarck (1815-1898)
時代は異なるのですが、両者の発言には通じるところがあります。それは、自分の経験ではなく、歴史から学び直すことが重要である、ということです。歴史とは他者の経験であり、他者の経験から学ぶことで自分の誤りを避けることができると考えられます。再学習とは自己に閉じて反省することではなく、外に目を向け、他者の経験 (成功・失敗) からの学びを自分のものとすることなのです。
それでは、デジタルビジネスで勝者になるために押さえておくべき最新のデジタルトレンドをご紹介しましょう。
4つのデジタルトレンド
- デジタル倫理を意識する:デジタルの世界での信頼
- デジタルメッシュを採用する:境界のないプラットフォームの活用
- データを消費し価値を得る:考察こそが重要
- マエストロになる:混成チームの指揮
各トレンドについては、追って解説していきますが、これらの根幹には速度の違う2つのアプローチの重要性というコンセプトがあります。デジタルの世界で生き残るには、組織は2つのアプローチを取る必要があります。ひとつはコアとなる仕事の最適化を図ること、もうひとつはビジネス革新を起こすことです。詳しくは第1回をご確認ください。