IoTや人工知能(AI)、スマートマシン、ビッグデータなど、ITトレンドを示すキーワードが登場し、昨今ではデジタルビジネス、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションといった、あらゆるモノやコトがデジタル化される社会や経済への注目が集まっている。
あらゆるものがデジタル化され、モノがコンピュータにより最適に制御される状態を指す「インテリジェント化」を達成することで、産業構造の変化と新たな収益性を生み出す経済圏である「インテリジェントエコノミー」が形成されていくと予想される。
インテリジェントエコノミーとは、あらゆるモノやコトのデータ化とAIの高度化により、人間との協調や人間の支援、さらには、人間が介在しなくても自律的な取引が形成され、市場の付加価値を生み出す経済圏を指す。
Gartnerが2015年10月に発表した「Gartner Predicts 2016」では、
2020年までに、人間のコントロール外にある自律型のソフトウェア・エージェントが、経済取引全体の5%を担うようになる
と予測している。Gartnerでは、銀行や保険、マーケット、為替、クラウド・ファンディングなどのあらゆるタイプの金融商品をサポートするアルゴリズムが登場するとし、「プログラム可能な経済」として新しい経済環境の基本要素としての役割を果たすとしている。
総務省が4月15日に公表した「AIネットワーク化検討会議」の中間報告書では、2020年以降の産業別ロードマップを紹介し、金融や保険分野のロードマップでは、FinTechによる小口・個別与信・決済機能の高度化、アナリストエージェントによる投資助言・支援やローン審査・与信管理の自動化、さらには、ファイナンシャルプランナーの労働代替などを予測している。
Gartnerや総務省のロードマップなどの予測を踏まえると、金融や保険分野の自律化と自動化が進み、人間が介在しなくても自律的に経済取引が可能な経済圏が形成されていく可能性は十分に考えられるだろう。
出所:総務省 「AIネットワーク化検討会議」中間報告書 2016.4.15
政府では、IoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどを第4次産業革命の新しい産業の柱として、政策的な取り組みも進めており、6月2日には「日本再興戦略2016」を閣議決定した。新たな有望成長市場の創出では、IoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどによる第4次産業革命の実現によって、2020年には30兆円の付加価値創出を目指している。
出所:日本再興戦略2016 2016.2