今週の明言

CiscoのCEOが日本初会見で垣間見せた確固たるプライド - (page 2)

松岡功

2016-06-17 12:00

 もう1つ印象深かったのは、会見の質疑応答で筆者が、「CiscoはAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Google、IBMが展開しているようなパブリッククラウドサービスを本格的にやるつもりはあるか」と聞いたときのRobbins氏の回答だ。

 「Ciscoはクラウドファーストでビジネスを展開しており、さまざまなソリューションをクラウドサービスとして提供している。ただ、当社のビジネスモデルとしては、パートナーであるクラウドサービスプロバイダーに当社のテクノロジを提供し、パブリック、プライベート、ハイブリッドといった全てのクラウドサービス形態に対して支援していくのが基本だ」

 この回答は、Robbins氏のコメントを捕捉した日本法人社長の鈴木みゆき氏の話も加味したものだが、要は、AWSなどと同様のパブリッククラウドサービスを本格的にやるつもりはないが、クラウド事業は強力に押し進めるということだ。

 ただ、Robbins氏自身は「やらない」という表現を避けているように、筆者には感じ取れた。これも確固たるプライドの成せる業なのかもしれない。

「人と協調して問題を解くAI技術にこだわりたい」
(NEC 山田昭雄 データサイエンス研究所 所長)


NECの山田昭雄データサイエンス研究所 所長

 NECが先ごろ、超大規模データを高速に分析できる人工知能(AI)の新技術を開発したと発表した。山田氏の冒頭の発言は、その発表会見で、同社のAI技術開発の基本姿勢について語ったものである。

 NECが今回開発したのは、AI用いてビッグデータに混在する多数の規則性を発見する「異種混合学習技術」をもとに、超大規模データから分散コンピューティングシステムで予測モデルを生成する機能を強化した「分散版異種混合技術」と呼ばれるものだ。

 同社によると、従来、データのサンプル数が数千万件以上でコンピュータ1台の搭載メモリ量より大きい超大規模データを分析する際は、あらかじめデータを分割して分析していた。また、高性能なCPUの搭載(コア数増加など)にも限度があり、大規模データ分析における性能の改善が課題となっていた。

 これに対し、分散版異種混合技術は、分散されたコンピュータ上でそれぞれ異種混合学習での分析を行うと同時に全体の整合も行えるため、コンピュータの台数を増やすことで、データの規模に制限なく予測モデルを生成できるという。例えば、大手金融機関の残高予測や大規模通信事業者の解約者予測など、数千万件以上のサンプルによる超大規模データの分析が可能だとしている。

 この新技術を用いて実証した結果、従来と比べて学習速度が約110倍高速化し、予測精度も約17倍向上したという。

 NECはAIを「学習、認識や理解、予測や推論、計画や最適化といった人間の知的活動をコンピュータで実現する技術」と捉え、1980年代から関連技術の研究開発を進めてきた。同社ではそうした人間の知的活動をデータ処理の流れから、「見える化」「分析」「制御や誘導」と分類し、それぞれの段階で最先端技術を生み出してきた。

 今回の新技術は、その分析領域において世界オンリーワンの異種混合学習技術をさらに高度化したもので、NECのAI技術の研究開発力をあらためて示した形だ。同社はそうしたAI技術の研究開発を担う戦略組織として、今年4月にデータサイエンス研究所を設け、山田氏がその初代所長に就任した。同氏が今後、NECのAI技術の研究開発をどうリードするか、注目しておきたい。

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