#2:十分にあり得るシナリオ
アイルランドが、英国に向かうはずだったすべての投資の受け皿となる。ブレグジットによって、アイルランドは金融サービスとテクノロジを提供するための優れた地位を得るだろう。また、同国は西欧諸国のクラウド運用におけるハブにもなるはずだ。
#3:起こりそうにないものの言及しておくべきシナリオ
ブレグジットをきっかけにEUから離脱する国が相次ぎ、クラウドをめぐる状況はさらに複雑化する。ユーロは消滅し、各国は自国通貨を使用するようになる。英国のEU離脱決定後の報道では、スコットランドが英国からの独立を検討していると伝えられた。また、他のEU諸国の政治家たちが離脱の是非を問う国民投票の実施を求めているとも伝えられた。EUが崩壊するかどうかを判断するには時期尚早だが、規模の拡大を模索しているクラウドプロバイダーにとって、こういった可能性がもたらす影響は無視できないほど大きいだろう。ただ、EUの崩壊は一朝一夕には起こらないと考えられる。詰まるところ、関係各国は国民投票を実施する前に、英国がどうなるのかを見極めようとするはずなのだ。
#4:EUが崩壊した場合に起こりそうなシナリオ
EUが崩壊した場合、構成各国は市場の規模や重要性に応じて、自らで法律を整備し、判断を下すようになるだろう。また、国と国との間でどのようにデータがやり取りされるのかも今のところ不明瞭だ。EUの崩壊によってコンピューティング網が弱体化するとともに、国家間の合意形成が脆弱なものとなるだろう。その結果、AWSとMicrosoft、Google、IBMという現在の4強ではなく、特定の国に特化したクラウドプロバイダーが台頭してくる可能性もある。
#5:可能性として考えられるシナリオ
EU圏内におけるクラウドの進歩が停滞する。英国のEUからの離脱が迅速に行われた場合には、上述したシナリオのいずれかに当てはまるだろう。しかし、英国とEUの交渉が長引いた場合、一部のクラウドプロバイダーは他の地域での成長戦略を模索するはずだ。交渉が長引けば長引くほど、EUの重要性が薄れていく。つまり、EUにおける不透明感が解消されるまでは、欧州ではなくアジアでのクラウドインフラ建設という道に向かうはずだ。そうなればEUは、クラウドへの移行において何年も後れを取ることになるだろう。