SIは単に言われたことをやるのではなく、海外の先進的な事例を把握し、その技術の応用を提案できれば、今までの請負型のビジネスから課題を解決するシステムの提案というビジネスに転換できます。
たとえば今、MicrosoftのAzureを担いでいる企業はいくつもありますが、日本では流通に強いAzureのプレイヤーはいません。そこはホワイトスペースです。ここを取れば、流通で最強のAzureインテグレーターになれるわけです。
ホワイトスペースを取りに行くときには、必ず先行投資が発生します。手を挙げたときに「私たちのこれが答えです」というものを作るところが先行投資になりますので、サービスやパッケージの感覚で「新しい事業を作る」という先行投資マインドが大切になります。業務ノウハウや経験値があるから、ペインポイントも理解しています。そして汎用的で横展開できる製品やサービスを作ってしまえれば、SIerは一気に変われますよね。
――保守運用が中心だったSIerが、新しい製品を提案するように変わるのは難しい印象がある。
小野氏もちろん、全員が脱皮して生まれ変わるようなことは無理でしょう。ただ、旗を振る人ができればいいわけです。この4月からテクノロジとイノベーションを担当する「テクノベーションセンター」という部署を立ち上げました。私の肩書きはCTOとテクノベーションセンター長です。各事業部のペインポイントとホワイトスペースを顧客と一緒になって探して、インタビューやディスカッションをして見つけ、解決策も一緒に考える。ディスカッションはとてもフレンドリーですし、和気あいあいとやっていると、アイデアもどんどん出てきます。これはかなり手応えがあります。
――そうしたことを実現するためには、どのような組織にすればいいか。
小野氏ペインポイントとホワイトスペースを組織が発見するためには、その2つを見つけることを経営陣が明確に方向性として打ち出すことと、そしてそのポイントが「Only One/No.1」であることが重要です。「うちもできます」と言った瞬間に「One of Them」になってしまいます。そうならないためには、技術に精通していることも重要です。
また、Googleが成功したプロジェクトを分析した結果、HRTの原則が見つかったという話があります。HRTは「Humility(謙虚さ)」「Respect(尊敬)」「Trust(信頼)」です。謙虚に、尊敬し合い信頼し合う。これがGoogleが行き着いた答えなのです。これはすごく大事で、本当に友達感覚でHRTを重視して、現場に話を聞きに行くと、いろいろな知恵がでてくる。日本の企業は、これが一番できていないのではないかと思います。
――CTOとしてセゾン情報システムズの展望は。
小野氏 セゾン情報システムズは先進的な技術に強くて、品質が高いソフトウェアが開発できて、それによってイノベーションを体現できる会社です。テクノベーションセンターはまさにそういう部署です。2013年にアプレッソと資本業務提携したときに、私はHULFT事業CTOという顧問でした。そしてHULFTをほかの事業部でもやっていくようになり、全体のCTOになり、その展開の重要性から取締役CTO、常務取締役CTOになりました。そしてテクノベーションセンターも作りました。
そうした流れから、まずHULFTで変化が起こったということです。それをSIの事業で、HULFTはパッケージだけれども、SIの事業はSIの事業でHULFTとは違うのだとみんな最初は言っていたのですけれども、実は一緒です。ペインポイントとホワイトスペースを見つけるべく、現場と同じ目線で技術を理解すること。あとは先行投資に対して恐れずきちんと上層部がリスクを取る。これを深化させていきたいですね。