「アマゾンがリードする段階は終わる」--オラクルのエリソン氏

Stephanie Condon (ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2016-09-20 17:00

 Oracleの最高技術責任者(CTO)Larry Ellison氏は、同社の第2世代IaaSデータセンターを武器に、クラウドインフラにおける頂点の座を狙っている。


Larry Ellison氏が9月18日に「Oracle OpenWorld 2016」で皮切りとなる基調講演を実施した(写真は2015年のもの)。

 Ellison氏は米国時間9月18日夕刻、サンフランシスコで開催中の「Oracle OpenWorld 2016」の基調講演において、同社の第2世代IaaSデータセンターの稼働開始によって「Amazonがリードする段階は終わる」と宣言し、Amazonに対抗する姿勢を強く示した。

 同氏は基調講演のなかで「彼らを深く尊敬している」と述べたうえで、「Amazonの行く手には強敵が待ち構えている」と述べた。

 Ellison氏は過去に、IaaSだけでなく、PaaSやSaaSを含むクラウドの完全なスイートをOracleの顧客に提供するという自らの野望を包み隠すことなく語っていた。そして今回、同社の第2世代IaaSデータセンターに関する詳細について説明した。

 同氏によると、Oracleは「Amazon Web Services(AWS)」の2倍のコア数と、4倍のストレージ容量、10倍の入出力性能を実現するという。

 そのうえで同氏は「しかも、安価になるということを覚えておいてほしい」と続けた。

 さらに同氏によると、このデータセンターはデータをユーザーの近くに配置するとともに、壊滅的な機能停止を避けるために、さまざまなリージョン内に複数の「アベイラビリティドメイン」を配置するようになっているという。これらドメインは、光ファイバーで相互接続され、全ドメインのデータが複製されることになる。Ellison氏は「単一障害点は存在しない。われわれのデータセンターが1つ丸ごと停止しても、ユーザーはそのことにまったく気付かないはずだ」と述べた。

 ドメインは世界各地に配置され、相互接続されることになる。Ellison氏によると、これらのデータセンターではパフォーマンスを向上させるために、世界各地に分散した断片的データを活用するという。

 OracleのIaaS事業に対するEllison氏の野望は確かに大胆だ。AWSのIaaS市場シェアは、Synergy Research Groupが8月に発表した調査結果によると2位の3倍近くもある。またAWSは、Gartnerによる調査結果「Magic Quadrant for Cloud Infrastructure as a Service」でもIaaS市場を圧倒している一方で、OracleはGartnerの図にプロットされるだけの十分な市場シェアすら獲得できていない。

 一方、OracleのIaaS事業は伸びているとはいえ、SaaS事業やPaaS事業ほどの成長率ではない。2017会計年度第1四半期決算(8月31日締め)において、SaaS事業とPaaS事業をあわせた売上高は前年同期比82%増(恒常通貨ベース)の8億1500万ドルとなった。これに対して、IaaS事業は前年同期比10%増の1億7100万ドルだった。

 Ellison氏は、他のどのプロバイダーよりも多くSaaSおよびPaaSを販売していると述べた。

 また同氏は18日夕刻、「Cloud@Customer」という新製品も発表した。これは、パブリッククラウドの延長線上でサブスクリプションベースのサービスとして提供され、顧客はオンプレミス環境上でハードウェアやソフトウェアに投資することなく同サービスを利用できる。

 同氏は「われわれのクラウドで用いているマシン構成とまったく同じものを市場で提供する」と説明するとともに、「まったく同じソフトウェアとハードウェアを(中略)顧客のデータセンターのファイアウォールの内側にインストールし、顧客の高速LANに接続することができる」と述べた。

 そして同氏は「これは、例えばAmazonが提供しているような、単なるパブリッククラウドとはまったく異なるものだ」と付け加えた。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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