海外コメンタリー

「ムーアの法則」限界説飛び交う中、プロセッサ高速化への道を模索するチップメーカー - (page 6)

John Morris (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2016-10-31 06:30

 代替策の1つとして、複数のDRAM回路をロジックコントローラ上に積層し、プロセッサとともにインターポーザ上に配置して封止するHigh-Bandwidth Memory(HBM)という技術がある。こういった技術を用いたチップを製造している企業としてSK hynixとサムスンがあり、両社ともHot Chips 28においてHBMのロードマップを発表している。現行のHBM2デバイスは、8Gビット(1Gバイト)のチップを最大8層積み重ね、最大帯域幅256GBpsを実現している。サムスンはプレゼンテーションにおいて、HBM3では16Gビットあるいはそれ以上の高密度チップを8層以上積層し、2倍以上の帯域幅を実現すると語った。AMDの「Radeon HD R9」シリーズやNVIDIAの「Tesla P100」といったGPUは既にHBMを採用しているものの、HBMの製造コストは非常に高いため、多くのグラフィックスカードはGDDRメモリを使用し続けている。サムスンはシリコン貫通電極(TSV)の数を減らし(これにより帯域幅は犠牲になる)、個別のコントローラチップを無くし、シリコンではなく安価な有機基材を採用した低価格版HBMの製造についても語っていた。またSK hynixは詳細こそ明かさなかったものの、HBMをより多くのアプリケーションで利用できるようにするとも語っていた。

 Micron Technologyのアプローチは異なっており、GDDR5X(NVIDIAの「GeForce GTX 1080」で使用されている)によってグラフィックスメモリの速度を増加させつつ、スループットの最大化とRAS(信頼性と可用性、サービス可能性)が要求されるネットワーキングアプリやストレージアプリといった特定分野向けのハイブリッドメモリキューブ(HMC)を開発している。また同社は、サーバ向けとして3D XPointメモリに注力しており、Hot Chips 28ではこの新型不揮発性メモリが、3D NANDフラッシュメモリを用いたPCIeベースのSSDと、DRAMベースのシステムメモリの中間に位置する「遠いメモリ」(far memory)になると語っていた。最終的にIntelとMicronは、3D XPointをDIMMなどのメモリモジュールに搭載し、DRAM並みの高密度(そしてコスト)のストレージをインメモリデータベースといったアプリケーション向けに提供することになるだろう。こういった永続メモリやストレージクラスメモリを使うには、OSやソフトウェアのアップデートが必要となるだろうが、システムのパフォーマンスは劇的に向上するはずだ。

 ムーアの法則の時代は終わりに近づきつつあるかもしれないが、チップメーカーやシステム設計者はパフォーマンスの向上と機能の追加に向けた道を模索し続けている。実際のところ、シリコンベースのCMOSテクノロジによる実装が理論的限界に近づきつつあるなか、業界はさらなる創造性を発揮しているようだ。このため、向こう数年以内にシステムアーキテクチャに革新的な変化が訪れるだろう。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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