海外コメンタリー

「ムーアの法則」限界説飛び交う中、プロセッサ高速化への道を模索するチップメーカー - (page 3)

John Morris (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2016-10-31 06:30

 2つ目の疑問は、実際のパフォーマンスがどの程度になるのかだ。現時点で明らかになっているプロセスとアーキテクチャから判断すると、競争力が増しているのはほぼ間違いないだろう。しかし、3GHzの「Intel Core i7-6900K」(Broadwell)とほぼ同じ性能になるとAMDが評価したBlender描画テストだけでは、クライアントやサーバ上の主なワークロードで実際にどれだけの性能を達成できるのかはほとんど分からない。AMDは「Zen+」プロセッサの今後の数世代でデータセンター分野において成功を収めるという、3~5年単位の戦略について語っている。このことは、ZenによってIntel製品との差が縮まりこそすれ、2017年中はパフォーマンス面で頂点を極めるのは難しそうだという点を示唆していると指摘しておきたい。

14nmプロセスに改良を加えるIntel

 IntelはHot Chips 28で新たな発表を行わなかったが、その1週間後に「Intel Core」プロセッサの第7世代となる「Kaby Lake」の最初の製品を発表した。Kaby Lakeは新たなプロセスで製造されているわけではない。Intelは10nmプロセスの採用を2017年の後半に延期しているのだ。しかし、既存の14nmプロセスに改良を加え、トランジスタのパフォーマンスを12%向上させていると述べている。全体的な設計は同じだが、IntelはGoogleのVP9コーデック(YouTubeが採用している)とともに、10bitカラーをサポートした高解像度なHigh Efficiency Video Coding(HEVC:Netflixが採用している)コーデックをハードウェアでデコードできるようにしているため、4K動画再生時のバッテリ持続時間を大きく延ばせるという。

 Intelは既にKaby Lakeプロセッサの出荷開始を伝えていたが、今回その詳細についても正式に明らかにした。第一弾はTDP(熱設計電力)が4.5WのYシリーズ3製品と、15WのUシリーズ3製品だ。これらはすべて2-in-1型ノートPCや薄型ノートPC向けのプロセッサであり、2つのプロセッサコア(4スレッド)と、24基の実行ユニット(EU)を搭載した「Intel HD Graphics」を同じダイ上に封止したものだ。Intelは、これらのプロセッサを搭載した最初の製品が9月に発売され、ホリデーシーズンまでに100種類以上の製品が市場に投入されると述べた。ハイエンドのノートPCやデスクトップPC、そして業務用PC、ワークステーション向けのKaby Lakeプロセッサは2017年に利用可能になるという。さらに初の10nmプロセスとなる「Cannon Lake」プロセッサの市場投入は2017年後半に予定されているが、デスクトップPC向けの製品が近い将来に利用可能になるのかはまだ不透明だ。

ポスト「ムーアの法則」時代におけるIBMの「POWER9」戦略

 AMDと同様、IBMはHot Chips 28で発表した同社の最新版高性能「POWER」プロセッサがメインストリームのサーバ市場でより競争力を発揮することを望んでいる。このプロセッサは、IBM独自のSOI(Silicon-On-Insulator)ウエハを用いたプロセスではなく、GLOBALFOUNDRIESの一般的なシリコンウエハとサムスンのFinFET構造トランジスタを用いた14nmプロセスで製造される初めてのPOWERプロセッサとなる。CPUコアは新たな命令セット(Power ISA Version 3.0)と、より精度の高い分岐予測、より効率的なパイプラインを用いて再設計されており、同じ動作周波数の「POWER8」よりもスループットを1.5〜2.5倍向上させている。「POWER9」には、コアあたり8スレッドを処理できる「SMT8」コアを12基搭載した製品と、コアあたり4スレッドを処理できる「SMT4」コアを24基搭載した製品が用意される。つまり、いずれも合計96スレッドの処理が可能となっている。なお、コア内には32KバイトのL1命令キャッシュと、32KバイトのL1データキャッシュが内蔵されているほか、SMT4には2つ、SMT8には4つの「スーパースライス」と呼ばれる128bit処理ユニット(これ自体は「スライス」と呼ばれる64bit処理ユニット2つで構成されている)が含まれている。また、SMT8コアを12基搭載した製品はL2キャッシュを合計6Mバイト(コアあたり512Kバイト)、eDRAM(混載DRAM)によるL3キャッシュを120Mバイト搭載している。

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